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□ジェラシーな彼
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土方はそれを片手にう〜んと唸り続けていた。
手に持っているのは、某超有名菓子店の特集が載っている雑誌だ。
そこにはでかでかと、『素敵な貴女から愛しのあの人へ』との煽り文句が書かれてあった。
そう、ヴァレンタインなのである。
その雑誌に載っている限定商品が欲しいのだが、土方はその煽り文句に引っかかっていた。

『貴女』じゃないんだよな・・・

やはり女限定で、男の自分は買ってはいけないのだろうか?
また変な解釈をして悩んでいる土方を、後ろから見ている男がいる。
真選組1番隊隊長・沖田総悟だ。
彼はうんうん唸り続ける土方の肩越しに、本を覗き込んできた。
その本の内容を見て、にんまりと笑みを浮かべる。
彼は土方で遊ぶことに、人生を賭けていた。

「あぁ、ヴァレンタインですかィ」

沖田の存在に全く気付いていなかった土方は、バン!と本を閉じて、それこそずざざざざっと
擬音語をまき散らしながら後退った。
いつもはシミ一つない陶磁器のように滑らかな乳白色の肌は、これ以上は無理!というほど
真っ赤になっている。
口をパクパクとまるで酸欠状態の金魚のようにさせている土方を見て、一瞬面白くなさそうな顔を
した沖田は、しかし次の瞬間には何かを思い付いたようにほくそ笑んだ。
パニックに陥っている土方は、それに気付くことはできなかった。

「土方さぁん、ヴァレンタイン期間中は男はチョコを買えないって知ってやしたかィ?」
「え?!まじでか???!!!」

が〜んと倒れ伏しそうになる土方に沖田は追い打ちをかける。

「知らなかったんですかィ?それでも甘味好きな旦那のことだ。
 首を長くして待ってることでしょうねィ」

もし貰えなきゃ、くれる女の子に乗り換えるかもしれやせんぜ

土方の顔が赤から一気に青に変化した。それはもう見事な変わりっぷりだ。
いつもなら、したり顔をしている沖田に気付くだろうに、今の土方にはそんな余裕はなかった。
土方はすでに泣きそうな顔をしている。
それを見て、沖田は土方が自分の策にハマったことを確信した。

「いい方法がありやすぜ、土方さん」

いつもの冷静な土方なら、きっと前にも同じような台詞を恋人の口から聞いたことをすぐに
思い出せただろう。
しかし今の土方は正常な思考を持ち合わせてはいなかった。
沖田の言うがまま、彼の部屋に赴いたのだ。
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