戦国絵巻物語

□鏡花水月  第二話「流星の道しるべ」
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越中に入り、花月達は、転々と移動しながら野武士生活を続けていた。
野武士とは、特定の君主を持たず、戦になると兵として働く武士の事。
戦の無い時には、農作業を手伝ったり、用心棒をしたり、様々な事をして生計を立てていた。

花月は、後ろに髪をひとつにまとめ、外では兄達と同じように男子の姿をし、戦の時には、九家の四男と言う事で一緒に活動していた。
兄達は、花月の身を案じて、戦に参加する事には猛反対であったが、頑として聞く耳持たず、決して無理はしないと言う約束を交わして、供に戦に加わっていた。


それから三ヶ月、季節は暑い夏...。
花月達は越中新川郡の小さな農村で家を借り、農作業を手伝ったり、農村の治安を守る用心棒などして、暫く穏やかな日々を送っていた。

そんなある日、武官のような身なりの者が、訪ねてきた。
「こちらは、腕の立つ野武士達がお住まいのお宅だと聞いておりますが、まことですかな?」

「何かご用がおありでしょうか?」
庭で野菜を洗っていた、珊瑚が手を止めて、どこの誰なのかと探るような顔をして、答えた。

「拙者は、ここ越中新川郡の守護代である、椎名 康胤(しいなやすたね)公の家臣 増気左衛門と申す物だが、今、戦の準備を始めており、兵を集めておるところで、その事で話しがあるのじゃが...。」

「そうでございますか。どうぞ、中にお上がりになって少々お待ちください。今、頭を呼んできますので...。」
そう言って珊瑚が、九家長兄 雷月を呼びに行った。
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