戦国絵巻物語
□鏡花水月 第一話「双子の姫君」
4ページ/10ページ
そんな時、香月の父晴貞公の元に、信長の使者が訪れた。
香月を信長公の元になるべく早く来させる様にとの伝言で、信長公が「いつまで待たせるつもりか」と、かなりお怒りの様子だったとのことだった...。
信長の考えは、香月の縁談を心待ちにしているのではなく、縁談によって、加賀と強く手を結び、実質加賀を我が物にしたいのだ。
晴貞公も、その事は重々承知していたが、信長公の傘の下ででも、富樫の名を残したいと思っていた。
それだけ、逼迫した状態だった。
困り果てた晴貞公。
ずっと床に伏せてばかりの香月を、とても信長の元に送り届ける事など無理そうな状況だった。
晴貞公は、最後の手段として、ある考えを思い、悩んでいた。
「のう 珠姫、余はある事を考えておるが、それは人の道にはずれる無情な事だと、悩み苦しんでおる。」
「殿のお心の内は分かっております。」
殿を気づかいながらも、辛い表情の珠姫。
「どうすればいいかの。」
ため息をつく晴貞公。
「殿の意に従います。」
珠姫は目を潤ませ、殿に深々と頭を下げた。
悩みに悩んだ末、花月を呼び戻す事に決めた。