戦国絵巻物語
□鏡花水月 第一話「双子の姫君」
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時は過ぎ、花月は15歳の娘に成長しておりました。
三人の兄達と、馬を乗り回し、野山を駈け回り、棒切れをふり回し兄達と剣術の稽古をしたり、男勝りの元気な娘に成長しておりました。
花月は武芸に長け、特に馬術と弓は、兄にも引けを取らないぐらいの名手でした。
外ではいつも兄に混ざって男の子の格好で駈け回っていたので、遠目には男の子と見間違えてしまいましたが、じっくり見れば、その容姿、姿は、際立つ気品溢れる美しさがあり、人目を引きました。
兄達は、両親から花月の出生の秘密を聞かされており、万が一の時は、三兄弟力を合わせて、お守りするようにと命ぜられておりました。
花月自信も、幼い頃から美しい高貴な雰囲気のご婦人が時折訪ねてきては、優しく可愛がってくださり、また、立ち振る舞いや、茶の湯、生け花、龍笛、舞など、色々な事を教えてくださり、その方から、八曜紋入りの懐剣と菱に酢漿草紋入りの手鏡を賜り、薄々、その方が実母であり、自分の出生には秘密がある事も感じておりました。
懐剣の八曜紋は、富樫家のご紋、手鏡の菱に酢漿草紋は、当主の奥方様のご実家、公家である大炊御門家(おおいのみかどけ)のご紋。
自分は訳あって、富樫家から出された者だと、感じておりました。