戦国絵巻物語

□鏡花水月  第三話「三ツ者」
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花月達は、椎名 康胤公に文を送り、越中新川群を発った


八曜十陣組の事を大変気に入り、頼りにしてた、康胤公は、とても残念がり大変気落ちした。
あの美しく気高く勇ましい 姫君花月に、もう会えなくなってしまった事はとても苦しく悲しい事であった。

「鏡花水月...。あの姫君は、触れる事の出来ぬ美しい幻なのやもしれぬな...。」
庭に目をやり手水鉢(ちょうずばち)に浮かんだ、淡い桃色の睡蓮に目をやった。


花月達は、信濃に入る街道を進んでいた。

「雷兄様。あれは?」
女子供含め人々が縄で繋がれ、皆重苦しい表情で歩いている姿が見え、見慣れ無い異様な光景に、花月は戸惑った。

「勾引だと思います。」
雷月は固い表情で、横目でチラッと見た。

「それは何ですか?」
聞きなれない言葉に、花月が不思議そうな顔をした。

「争いに負けた国の者達は、勝利した側の戦利品として奴隷となり、売られていくのです。」
辛そうな表情の雷月

「そんな...。」
心痛んだ花月は目を潤ませた。

「何とかしてあげたくても、我々にはどうする事も出来ぬのです。」
悔しそうに武が言った。

「我々も野武士として、そう言う事に手を貸しているのやもしれませんね。」
花月は目を伏せて、悲しい顔をした。

「椎名軍に手を貸しましたが、康胤公はその様なお人ではありませんでしたから、大丈夫です。これらの者達は、おそらく甲斐の武田軍に敗北した側の者達だと思われます。」
情報収集が得意で、知識豊富な隼人が言った。

「甲斐 武田軍...。」
花月はそれを聞いて、何となく身震いが起こる様な気がした。

「甲斐の国は甲斐の龍と言われ、諸国庶民から恐れられている武田信玄の治める国でございます。」
隼人が続けた。

「花月様、あそこは首が並んでおります。違う道を通りましょう...。」
珊瑚が慌てて行く手を制止した。

「あれは、おそらく武田軍に負けた兵たちの首...。」
琥珀が青ざめて言った。

「武田信玄...。なんて冷酷で恐ろしい人なのでしょう...。」
花月が呟いた。
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