頂き物

□いま、愛してキスして
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「ホイストさん」
「何でしょう名前様」

"名前様"
なんてよそよそしい呼び方なんだろう

「何でもないです。呼んだだけです」
「そうですか、失礼します」

一礼して退室する彼を見ていた
きっちりしたスーツに身を包んだ、無駄の無いシルエットがリビングルームを出ていく
私から離れていく
どこかに行ってしまう

「どうかしましたか」

華奢そうに見えるけれど意外と大きい彼の背中を抱き締めたら彼は足を止めてその場に立ち止まった

「メランコリィ様に呼ばれていますので、離していただけますか」
「行かないでください」
「それは無理です」
「行かないで!!」

腕に力を込めて彼にしがみつく
この状態、まさに今の私と彼の関係みたい
余裕なんてほとんど無くて
私が彼に必死でしがみついてるだけ

「ホイ!何してらっしゃいますの!?早く来てくださります!」

メランコリィが彼を呼んでいる
ちょうどリビングルームの上にある彼女の自室から

「はい、今行きますよメラ様」

彼が少し声を張り上げて応答するから、その声を背中越しに聞いた
こんなに近くで感じているのは私なのに、彼はメランコリィに言っている
たまらなく胸が苦しい

「もう…限界です。私はもう我慢できません」

その甘い声を、紳士な口調を
私以外に向けないで

「ホイストさんのこと恋人だと思ってたけど、それって私の独りよがりですか」

間を置いて彼は答えた

「仕事中ですので」

振り返った彼の瞳は少し物憂で、私を真っ直ぐ捉えて、それ以上何も言わなかった

「そうですよね、変なこと言ってごめんなさい」

私情ばかりで自分のことばかり主張したことに申し訳なくなって私は俯いた
その刹那
不意に引き寄せられる肩
よろついて、完全に体を彼に預ける体勢になって一瞬何が起こったのか分からなかった

「変なことではありません。自由が利かないのは仕方がないことです。」
「ホイストさん…」
「仕事が済んだら、たくさん恋人らしいことをしましょう。こう見えても私だって貴女に触れられないのが大変苦しいのです」

彼が魅惑的な声で言う
耳にかかる言葉と甘い吐息に私の体は微熱を帯びた
そして顔を少し傾けた彼の唇が私のに触れた
高まる鼓動がどうしようもなく苦しい

「しばしお待ちを、名前」

最後に頬を優しく撫でて彼は踵を返した
耳、唇、頬―――顔が熱い
今晩の彼の仕事終わりを予期すると胸が熱くなった

いま、愛してキスして


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冷泉真海鈴さんから相互リンクのお礼にいただいたものです(*´`*)
素敵なホイストさん夢をありがとうございます!
これからも冷泉真海鈴さんが書く夢に期待してます><*

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