聖なる騎士

□聖戦(全8ページ)
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フィルは、向かい側からサニアが歩いて来るのに気付く。


サニアも気付き…フィルの顔を見て、少し嫌そうな顔をした。


「フィル。平気そうな顔して、神経図太いわね」


彼女のキツイ言葉も、慣れてはきていたが…やはり少し、ムカッとくるものがある。


「そんな事ないですよ。俺だって…」


「…良いけどね…」


サニアの顔色が、青ざめているのに気付いた。


考えてみれば彼女にとって、初めての戦争…殺し合いなのだ。


弓技も、訓練は受けたが…実戦での経験が一切無かった。


一番辛いのは、サニアなのかも知れない。


この物言いも、虚勢ではないか…。


「サニア王女。あなたは確かに神々に選ばれたんだ。自分に負けないで下さいよ」


「…それくらい分かっているわ。大きなお世話よ」


そう言って、スタスタ行ってしまう。


しかし…立ち止まり、振り返る。


「でも、ありがとう」


サニアは微笑んだ。


これが、彼女の本当の笑顔なのかも知れない。


フィルは、城の外へ出て…空を見上げた。


澄んだ青い空。


とても、戦争が起こるとは思えないくらいに…良い天気だ。


フィルは「聖騎士」と呼ばれた。


「聖なる騎士か…。いいな」


ヨズフに羨ましがられた。


「フィル!久しぶりだな」


「騎士団長」


ジェイスの姿を見るのも、久しぶりだ。


白髪が増えたようだ。


戦力は膨大なものとなった。




マエリドルソ国の聖騎士団2000騎。


レガート国魔導士部隊1800人。


リテヌート国弓闘士部隊1600人。


マルカート国精鋭部隊2200人。


他にも、輸送部隊や救護部隊も編成されている。


その軍隊の数に、更に緊迫感が漂う…。


総指揮官である、レガート国王が先頭に立った。




「進軍!!!!!」




フィルとサニアとシーナを守るように、部隊はわずかな乱れもなく進軍した。


フィルの側には、ヨズフが目付け役として付いて行く。


リテヌート国が見えなくなった時。


空から光が差し込んだ。


「全軍、停止せよ!!!」


レガート国王が命じる。


空から、女性が現れた。


背中には純白の翼…。


その翼を羽ばたかせ、レガート国王の前に舞い降りた。
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