聖なる騎士
□聖剣に選ばれた者(全8ページ)
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後一週間に迫っている“行事”とは…。
「とある剣の所有者を決める」というものだ。
剣の名前は「グランディオーソ」
光神エロールが1000年前、このマエリドルソ国の英雄に与えた物だ。
四大国家に伝わる伝承には、こうある。
人間とエルフ対、妖魔と竜族が聖戦の悲しさ…虚しさに気付き争いを止め始めた頃…。
妖魔の国に王子が生まれた。
彼は、光神エロールと対になる闇の神…冥界の王の生まれ変わりだった。
冥界の王ジェラール。
彼の出現は、突然過ぎた。
その凶悪さで15歳になった時。
妖魔と竜族…そして、冥界の悪魔を使って地上人に戦いを仕掛けた。
種族の対立争いの時は何も手出ししなかった四種の神々だが…。
冥界の王ジェラールと「冥界の者」が関わっていて均衡が保てないと判断し、それぞれが「神の武器」を造り出した。
それを、エトランドの四大国家である…。
マエリドルソ国。
リテヌート国。
レガート国。
マルカート国。
それらの英雄に与えて均衡を保とうとした…と言われている。
ヨズフの説明を聞いていた青年は、こっくりと首をうなだれている。
「…寝るなよ…」
ヨズフは苦笑した。
こんな所も憎めない。
そう思う。
そして…。
ヨズフは青年を引っ張り上げて、広場へ向かった。
マエリドルソ国王城のバルコニー下に、広場はある。
騎士達が集まり、バルコニーには中年の男性騎士の姿があった。
「国王、来ないね」
ヨズフの隣に立っていた青年が首を傾げた。
国王は、なかなか姿を現さない。
「ああ。人を呼び出しておいて何なんだか」
「ヨズフ…言い過ぎだよ。誰かに聞こえたら、どうするんだよ…」
「皆思っている事だ」
ヨズフに反省の色は一切ない。
青年は内心、冷や汗を流していた。
だが…二人は国王の姿を、かつて一度も見た事がなかった。
やはり貫禄のある老人なのだろうか…。
それとも…。