天馬の騎士

□婚約(全16ページ)
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レルフは、私室で衣装に着替えていた。


着付けをトーナに手伝ってもらう。


銀色の長髪を、イージルが結っている。


「どうだろうか」


「もう少し左だな」


トーナに指摘され、イージルは手際良く結い直す。


「どうだ?」


「バッチシ!そら、頼む」


「ああ」


二人がかりで、レルフの着付けを手伝い…。


ようやく着替えが終えた。


「見違えるようだ…」


「王子。似合ってますよ」


今日のレルフは、いつにも増して綺麗だ。


「私語厳禁なんて…。どうかしてるよ」


レルフは溜め息をついた。


「儀式が終わるまでですよ」


「ともかく、王子。おめでとう」


レルフがトーナとイージルを伴って謁見の間へ向かうと…。


謁見の間では、国王が綺麗なドレスを着た少女の手の甲に口づけを交わしていた。


国王がレルフの存在に気付いて、少女を促した。


少女はレルフを見て…驚いた。


「レルフなのですか?ああ…見違えました」


少女は駆け寄り、レルフと握手を交わす。


少女はしきりに近況報告をしていたが、レルフは黙って頷くばかり。


これは決まり事で、男が儀式前に相手の女に言葉を交わせば、縁起が悪いという。


「では、儀式を始めようか」


そして、儀式は謁見の間で行われた。


宗教国家サーファから呼び寄せた司教が、聖書を読む。


「神の御身を前に、双方を祝福せよ」


レルフと少女は背中合わせに佇み…盃を取る。


「盃の聖水で体を清め、更なる祝福を受けよ」


少女が盃の中身を飲もうとしたが、レルフはその盃を奪い取った。


「え?!」


「どうしたんだ?!」


来客達は騒いだ。


レルフは黙って…飾られていた花を生けた花瓶に、盃の中身を注ぎ込んだ。


花は…茶色にひしゃげて、枯れた。


「毒…?!!」


「誰だよ、こんな事を…!!」


だが…国王は動じない。


「…何が目的だ」


国王は司教を睨みつけた。


来客達は訳が分からず…騒ぐばかり。


「神に仕える身の私が、何故?」


司教は聖書を取り落とした。


「…目的は何だ。国か?金か?私の命か?」


「何を言って…」


「…古の武器か?」


ピクリ…と司教の眉毛が動いた。


途端、国王の首から血が滴る。


「キャアアアア!!!」


来客達は悲鳴を上げて、逃げようとするが…神官達が道を阻んだ。


国王は毅然とした態度で、司教を睨みつけている…。
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