月星の王者
□序章:月王と星王(全17ページ)
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北王国リディア。
砂漠の都市と言われているエファ大陸の村や町の中でも、最も水が多く、人口も多い王国だ。
「…であるからして…」
王宮の一室で、家臣に教養を習うリディア王国王位継承者。
名は、レオス=エレファ=リディアンヌ。
あまり勉強は好きではなく、家臣の話を聞いているフリだけをしている。
「…さて、と。王子、この後はお夕食まで剣の稽古となっております」
「待ってました!!!」
王子…レオスは勢いよく立ち上がり、部屋を出て行った。
「…全く…。将来は民衆の上に立たなければならないというのに…。嘆かわしい…」
家臣は深い溜め息をついた。
リディア王国の王子レオスは、幼い頃からわんぱくだと周りから溜め息をつかれる存在だ。
本人は、自分が王位継承者だという自覚はなく、今日まで気楽に過ごしてきた。
一番好きなことは、剣を手に訓練すること。
いつか、世界を旅してみたいと思っているのだ。
訓練所に赴くと、また別の家臣が立っていた。
「本当に、王子は剣の稽古が好きですねぇ。晴れ晴れとした表情なんですから」
「当たり前じゃん。近頃、魔物が増えてきたらしいじゃねぇか」
「そうですね」
「旅の途中、魔物から人々を救ってあげるんだ。その為に腕を磨かねぇと」
「…え?」
「ほら、早くしないか。体がウズいて仕方ねぇんだよ」
「ちょっと待って下さい?王子…今、旅…とか言いませんでした?」
「ああ。それがどうした」
「旅…つまり、国の外を出ると?いけません、そんなこと。一国の王になろうというお方が外へ出るなんて…」
「いいじゃん。母上はまだ現役なんだし、別に俺が継がなくても…」
「王子!なりませんよ!」
「何をムキになってんだよ」
「あああ…分かっていらっしゃらない…。いいですか?」
家臣は溜め息をついた。