月星の王者

□序章:月王と星王(全17ページ)
2ページ/17ページ

北王国リディア。


砂漠の都市と言われているエファ大陸の村や町の中でも、最も水が多く、人口も多い王国だ。


「…であるからして…」


王宮の一室で、家臣に教養を習うリディア王国王位継承者。


名は、レオス=エレファ=リディアンヌ。


あまり勉強は好きではなく、家臣の話を聞いているフリだけをしている。


「…さて、と。王子、この後はお夕食まで剣の稽古となっております」


「待ってました!!!」


王子…レオスは勢いよく立ち上がり、部屋を出て行った。


「…全く…。将来は民衆の上に立たなければならないというのに…。嘆かわしい…」


家臣は深い溜め息をついた。


リディア王国の王子レオスは、幼い頃からわんぱくだと周りから溜め息をつかれる存在だ。


本人は、自分が王位継承者だという自覚はなく、今日まで気楽に過ごしてきた。


一番好きなことは、剣を手に訓練すること。


いつか、世界を旅してみたいと思っているのだ。


訓練所に赴くと、また別の家臣が立っていた。


「本当に、王子は剣の稽古が好きですねぇ。晴れ晴れとした表情なんですから」


「当たり前じゃん。近頃、魔物が増えてきたらしいじゃねぇか」


「そうですね」


「旅の途中、魔物から人々を救ってあげるんだ。その為に腕を磨かねぇと」


「…え?」


「ほら、早くしないか。体がウズいて仕方ねぇんだよ」


「ちょっと待って下さい?王子…今、旅…とか言いませんでした?」


「ああ。それがどうした」


「旅…つまり、国の外を出ると?いけません、そんなこと。一国の王になろうというお方が外へ出るなんて…」


「いいじゃん。母上はまだ現役なんだし、別に俺が継がなくても…」


「王子!なりませんよ!」


「何をムキになってんだよ」


「あああ…分かっていらっしゃらない…。いいですか?」


家臣は溜め息をついた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ