聖なる騎士
□訓練:前編(全6ページ)
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エトラ歴1336年。
六月。
マエリドルソ国の訓練場にて。
「王女はどうしたものか…」
ジェイスは悩んでいた。
王女は全く武器を持った事がなく「聖弓フェアリーアロー」に選ばれたが故に、弓の基礎訓練から始めていた。
フィルは剣を、幼少の頃から剣術塾に通い…また、剣士だった父親から手ほどきを受けていたので、戦力的には問題はない。
シーナも同じく、幼少の頃から魔法に精通し…さすが魔導隊長というだけあって、父親と引けをとらない。
だが…サニアはどうだろうか。
「騎士団長…。すみません…」
サニアは弓を射る事すら出来なかった。
リテヌート国から弓術の教官が来てはいるのだが…。
なかなか上達しない。
だが、フィルもシーナも、サニアを「女だから」とか「足手まとい」等とは言わない。
「ふむ…。今日はここまで!シーナは明日から剣術も指南するからな」
「はい」
まだ訓練を始めて、半月程しか経っていないが…。
訓練が厳しいのだ。
三人は疲れ果てていた。
しかし、フィルは人形相手に真夜中まで剣を振るう。
もはや、フィルを負かす者は存在しなかった。
シーナも同じで、剣士相手にも魔法で充分だ。
サニアはクタクタになり…すぐに休むが、今日は一生懸命に弓を射る。
ほとんど自習練…といった感じだ。
その日、フィルは一人…広場で剣を構えた。
息を吸って…剣を振るう。
剣圧が発生したが…フィルは溜め息をつく。
(…やっぱり駄目だな…)
たまたま通りかかったシーナは、そんなフィルを見て…首を傾げた。
翌日、訓練が終わり…真夜中、フィルは広場で剣を振るっている。
それが一週間ほど続き、フィルは座り込む。
「…おかしいな…」
「………」
「………」
シーナとサニアは、フィルを見つめた。
「何をやってるのかしらね」
「さあな…」
とにかく疲れていた二人は、特に気には留めなかった。