聖なる騎士

□聖剣に選ばれた者(全8ページ)
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――エトランド。


世界がこう呼ばれてから1336年。


二月の半ば頃。


エトランドの四大国家の一つ「マエリドルソ」


物語は、ここから始まる…。




「聖戦まで、後四年だな…」


「騎士階級無条件で、聖戦にかり出されるらしいな…」


「下級騎士も?!!」


「足手まといにしかならないだろう…?」


「いや…居るじゃないか。アイツが…」


訓練服を着た複数の男性達は、木刀を打ち合う二人の青年を見た。


今、一人の青年が…もう一人の青年の木刀を木刀で打ち払った。


木刀を無くした青年は衝撃で尻餅ついて、木刀を喉元に突き付けられて溜め息をついた。


「参ったか」


「参ったよ…降参だ」


尻餅ついた青年は立ち上がる。


「情けないなぁ…ヨズフ。五戦中四勝が俺だよ?」


「お前に敵う奴なんて、そうそう居てたまるかよ…」


ヨズフと呼ばれた青年は汗だくだ。


一方の青年は、息も切らしていない。


「お〜い!二人共!」


二人の元に、宮廷使用人の法衣を着た男性が駆け寄る。


「“行事”が後一週間に迫っているから王様が一応、全員広場に集まれ…だってさ」


男性は立ち去り、同じ事を伝えに行った。


それを聞いたヨズフは舌打ちした。


「一応…って何だよ…」


身分が低いのを馬鹿にされるには充分な言われだった。


ヨズフと青年は、マエリドルソ国の主力である「騎士」の中でも最も位の低い「下級騎士」…。


ヨズフは特に昇進したいとは思わない。


国王への忠誠に、どうしても嫌気がさす。


「当たり前だよ。騎士になってから、まだ五年しか経っていないのに」


青年は、さも当然だという表情で言った。


それはそうだけど…。


ヨズフは、そう言おうとしたが…溜め息をつく。


「…行こう」


「あっ。待てよ!」


青年は慌ててヨズフを追い掛けた。


水場で休憩を取る青年とヨズフ。


青年はヨズフを見た。


「“行事”って…何?」


「はあ?!」


マエリドルソ国の人間なら、誰でも知っている事だ。


青年は少し抜けている所があった。
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