精霊伝説

□王都の悲劇(全18ページ)
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ユルフ王国の王都に辿り着いた。


だが…市街の門は固く閉ざされていた。


「おかしいな…。マークル、どうなってるんだ?」


「さあ…」


三人が足止めを喰らっていると。


マークルが素早く身構えた。


タールナとヘレンダは驚き、その方向を見ると…。


「私は敵ではありません。安心して下さい」


ライトブルーの長髪に、長身の男性だ。


重そうな法衣を着ていることから、上位の魔法の使い手だということが見て取れた。


マークルが杖を下ろすと、男性は眼鏡を押し上げた。


「私は、アーデと申します。あなた方が持つ、その石…精霊石ではありませんか?」


「精霊石?」
「アーデだと?!」


ヘレンダが首を傾げる前に、マークルが驚いて叫んだ。


「本当に…あの、アーデ=クリスフなのか?!指折り数える中で、最も優れているという大賢者!!」


「大賢者とは恐れ多い…。大学院を5年ほど浪人しておりますし」


男性…アーデは微笑む。


「大賢者って?」


ヘレンダは首を傾げた。


「世界一の強い魔力と知識を持った人だよ」


「俺、この人に憧れて魔法を勉強してるんだよ」


タールナとマークルは、アーデに見惚れている。


ヘレンダは肩に身に付けた菱形のブローチに触れた。


「精霊石…?これが?」


「ええ。15年前に、三英雄がそれを携えて、邪精霊ガイターと戦った。その残りですよ」


聞いたことがあった。


悪い妖精…邪精霊ガイターが、精霊レイカに戦いを挑んだ。


精霊レイカは敵わないと判断し、力の根源である結晶を六つに砕いた。


邪精霊ガイターは、その六つに砕けた石を我が物にしようとしているという。


「君が、ヘレンダですね」


「えっ?どうして…」


「君は父親に似ていますからね」


「…大賢者って、何でも知ってるんですね」


ヘレンダは目を輝かせた。


「あのなぁ…。アンタ、ヘレンの知り合いなのか?」


マークルが訊いた。


「知り合いというか…ヘレンは、私の母の弟に当たります」


更に驚いた。


「世間は狭いと言うか…。で?ユルフ王国に何の用なんだい?」


タールナが溜め息混じりに言った。


「はい。双子の姉と宛てのない旅をしていたのですが…姉は街へ出掛けたまま帰らなくて」


アーデは固く閉ざされた門を見上げる。
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