精霊伝説
□王都の悲劇(全18ページ)
1ページ/18ページ
ユルフ王国の王都に辿り着いた。
だが…市街の門は固く閉ざされていた。
「おかしいな…。マークル、どうなってるんだ?」
「さあ…」
三人が足止めを喰らっていると。
マークルが素早く身構えた。
タールナとヘレンダは驚き、その方向を見ると…。
「私は敵ではありません。安心して下さい」
ライトブルーの長髪に、長身の男性だ。
重そうな法衣を着ていることから、上位の魔法の使い手だということが見て取れた。
マークルが杖を下ろすと、男性は眼鏡を押し上げた。
「私は、アーデと申します。あなた方が持つ、その石…精霊石ではありませんか?」
「精霊石?」
「アーデだと?!」
ヘレンダが首を傾げる前に、マークルが驚いて叫んだ。
「本当に…あの、アーデ=クリスフなのか?!指折り数える中で、最も優れているという大賢者!!」
「大賢者とは恐れ多い…。大学院を5年ほど浪人しておりますし」
男性…アーデは微笑む。
「大賢者って?」
ヘレンダは首を傾げた。
「世界一の強い魔力と知識を持った人だよ」
「俺、この人に憧れて魔法を勉強してるんだよ」
タールナとマークルは、アーデに見惚れている。
ヘレンダは肩に身に付けた菱形のブローチに触れた。
「精霊石…?これが?」
「ええ。15年前に、三英雄がそれを携えて、邪精霊ガイターと戦った。その残りですよ」
聞いたことがあった。
悪い妖精…邪精霊ガイターが、精霊レイカに戦いを挑んだ。
精霊レイカは敵わないと判断し、力の根源である結晶を六つに砕いた。
邪精霊ガイターは、その六つに砕けた石を我が物にしようとしているという。
「君が、ヘレンダですね」
「えっ?どうして…」
「君は父親に似ていますからね」
「…大賢者って、何でも知ってるんですね」
ヘレンダは目を輝かせた。
「あのなぁ…。アンタ、ヘレンの知り合いなのか?」
マークルが訊いた。
「知り合いというか…ヘレンは、私の母の弟に当たります」
更に驚いた。
「世間は狭いと言うか…。で?ユルフ王国に何の用なんだい?」
タールナが溜め息混じりに言った。
「はい。双子の姉と宛てのない旅をしていたのですが…姉は街へ出掛けたまま帰らなくて」
アーデは固く閉ざされた門を見上げる。