精霊伝説
□奇石戦争(全4ページ)
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フィンブル歴4302年。
世界の最北東に位置する小さな村、ナノレイク。
「産まれた…」
村にこだます赤ん坊の産声を聞いた人々は、安堵の溜め息を洩らした。
「…金色の髪と赤い目を持った赤子が誕生する時…村に災いがふりかかる」
村一番の老婆が、そう呟いた。
老婆は村の長で…これまで老婆の予言は外れたことがなかった。
なので、小さな命の誕生を人々は素直に喜べなかった。
一人の女が産んだのは…金色の髪の男児だった。
「エレナ。見てごらん。父親にそっくりだ」
「本当…。アレクス、大婆様の予言は絶対なのに…私…」
「我が子の誕生を嬉しく思わない人間なんているものか。さあ…後のことは任せて、休みなさいな」
「ええ…。ありがとう…」
赤子を取り上げた男…アレクスは夫ではない。
女…エレナの夫とアレクスの妻は姉弟で、昨年旅に出たまま帰らない。
きっかけは不思議な水晶にあった。
泣き疲れて眠った赤ん坊を母親の側の寝台に横たわらせ、アレクスは一つ溜め息をついた。
「…精霊石…か。あの方達は…死んだのだろうか」
すると、村にざわめきが起こった。