精霊伝説
□妖精の集落:前編(全23ページ)
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サウスコールドは、世界の最南端に位置する氷の大地。
雪は降っていないが、大地は凍り果て、凍てつく風が全身を叩きつける。
「…寒い…つか、死ぬ…」
マークルは凍った睫毛をしばたく。
「口で息をするな〜!肺が凍って本当に死ぬぞ〜!」
「鼻で息したら…鼻毛が凍って…これ…」
アーデが叫び、レンディは必死に鼻息を鳴らす。
かなりの距離を歩いた所で、いきなり足元の大地に亀裂が走った。
ビシビシッ…と氷の大地が裂け、ヘレンダとアーデが体勢を崩す。
「うわあッ!!!」
「これは…」
ヘレンダとアーデは互いの肩を支え合い、様子を伺う。
自然的に、こちらの大地が切り離されようとしているようだ。
「精霊レイカの力は、こんなにも…」
「アーデさん?」
「…世界の終焉が近い…ということだろうか。ヘレンダ、早く向こう側へ…」
アーデの言う通り、二人は仲間達の元へと亀裂を飛び越える。
「ビビった…!大丈夫か、二人共…!」
「何とか…。先を急ぎましょう」
ヘレンダが先頭をきって歩き出すと全員が後に続く。
巨大な氷の魔人…アイスゴーレムと戦闘になった時。
「エルファイッ!!!」
マークルが杖を掲げ叫ぶが、魔法が発動しない。
「エルファイッ!!!」
アーデも杖を掲げ叫ぶが、魔法は発動しなかった。
「何だ…?どうなってるんだよ!!!」
「いかん。ヘレンダ!!姫!!散開するんだ!!!」
背後の魔法援護を期待して突進していたヘレンダとタールナは、アーデが叫んだお陰で魔物の攻撃を回避出来た。
「キャアアアッ!!!」
セレフィアが、魔物が吐いた吹雪により吹き飛ばされ、大地に体を叩き付けられてしまう。
「セレフィア!!!」
アーデが彼女を抱き起こす。
「だ…駄目…。私の魔法も…使えませんわ…」
「な…」
「チッ…!!!」
レンディが舌打ちし、身構えた。
目の前にはアイスゴーレム…更に、背後には氷の巨鳥が迫っていた。
「…俺の失態だ…」
アーデはセレフィアを背後に庇い、身構えた。
陣形は見事に崩れ、魔法も発動しない。
頼りは…ヘレンダとタールナ、レンディの力技だが。