聖者と覇者

□禁断の魔法(全6ページ)
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ギルド達が森で野営し、就寝した頃…。




ロアは、テトの街に辿り着いたばかりで街の惨状に目まいを覚えた。


既に腐臭を放っている死体もあれば、真新しい死体もあった。

中には言葉で表現できないほど無惨な死に方をした人々もいるようで…。


平常心を保てる方がどうかしている。


一刻も早くギルド達に追い付かなければならない。

そう思い、テトの街を出たのだが…。

街道に入る前に、耐えきれず愛馬イレイザの背中から滑るように落ちた。


「…うぅ…グッ…」


吐き気を催し、涙が出る。


戦場には慣れてはいるが…あんな惨たらしい惨状は、本当に…有り得ない。


「…畜生…!!」


立ち上がり、街道を見渡す。

大地は荒れ、人間が四つんばいになって徘徊している。


ロアは愛馬イレイザに股がり、不気味な人間を避けて街道を走った。


しかし…。


「…ッ!!!」


左の肩に激痛が走り、振り返ると…。


矢を放ってくる騎馬兵に、いつの間にか背後を突かれていた。


「イレイザ!!」


手綱を操り、矢を避けるが…。


「グッ…!!貴様ら…!!」


吐血し、敵を睨みつけた。

新たに、背中に矢を射られたのだ。


「我の身に宿りし精霊。万物を、理を其の力で滅せよ…」


魔剣を掲げ、振り払う。


「破壊ッ!!」


叫ぶと、大気が凝縮されて爆発が起こった。

追って来た騎馬兵達が爆発に呑まれ、弾き飛んだ。


だが…。


なおも追って来ては矢を放ってくる。


「ど…どういう事なんだ…?!!」

「ギャフッ!!!」


ずっとロアに付いて上空を旋回していた奇妙な鳥だが、高度を下げて騎馬兵達の前に立ち塞がった。

ロアは慌てて手綱を引いて、イレイザの足を止めた。


「何をやっている!!」

「グルルル…」


奇妙な鳥は背中を丸め、口を大きく開けた。

途端に、凄まじい勢いで炎が吐かれた。


騎馬兵達は炎に呑まれ…灰になる。


奇妙な鳥はゼェゼェと息を荒げ、ロアの肩に捕まった。


「お…お前…」

「ピギャッ…」


ロアは心底、驚いた。


どこの世に、火を吹く生き物がいるんだと…。


「…いや、今は…」


一刻も早くギルドに会って、国王の最期を伝えてやらなければならない。

それに…この、奇妙な鳥のことについても。


ロアは愛馬イレイザの腹を蹴って、街道を抜けてノートスの街に入った。
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