聖者と覇者

□決意(全6ページ)
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テトの街の入り口で男が倒れているという話を聞いたギルドは、男の特徴を聞いて胸騒ぎを覚えた。


「長髪の、端整な顔立ちの男性で…長身でした。何処かの国の騎士のような格好でした」


宿の部屋に聖女を残し、男が治療を受けているという診療所へ赴いた。




丁度、医者が治療を終えて診察室から出てきた所で…ギルドは診察室を覗いた。


見慣れた長髪の男が上着を羽尾っている。


「ディルス…!」


男は振り向き、安堵の溜め息をついた。


「ああ…お久しぶりです」


二人は診療所の医者に礼を言って、街の丘に腰を降ろした。


「国王は魔剣ソウルイータで、私を避難させました」

「魔剣ソウルイータ?まさか…あれは門外不出の呪われた武器…」

「魔法に疎い国王が成した転移の魔法…。間違いないでしょう」

「父上は…予期して魔剣を…」


…国が陥落した。


詳しく知る度に、ギルドから笑顔が消えた。

顔色も優れない。


「…王子。貴方が生きていれば国は建て直せます。私も及ばずながらも…」

「俺は…国がなけりゃ、ただのガキだ」

「だからこそ、共にありたいんです」


ディルスはギルドの肩を抱いて、囁いた。


「お泣きなさいな。こんな時代に生を受けた貴方の血筋を、誰も責めはしない」

「…大丈夫…」

「…なわけないでしょう?今にも泣きそうな顔をしています」


次第に、ベソをかきだしたギルドをきつく抱きしめた。


「…馬鹿…野郎。分かってたのに……。こうなること…分かってたのに………」


聖女を連れ出した為に、国は滅んだのだ。


ディルスは言った。


「魔を倒して、早く楽になりましょう。死んでいった者達の為にも…我々は負ける訳にはいかない」


背中を軽く叩いてやると、ギルドは声を殺して泣いた。


「…ギルド様は、やはりお優しい。人間の死を…ちゃんと受け入れられる」

「…皆…。ごめん…ごめんよ…」


故郷を失った悲しみ…親しくしてくれた騎士や兵士達…。

それらの者達の笑顔が鮮明に蘇る。


ギルドは魔を憎み…誓った。


「許さない…。絶対に……倒してやる…」


涙を拭うと、ディルスも頷いて沈みゆく夕日を、じ…と見つめていた。
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