聖者と覇者
□魔の居場所(全7ページ)
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翌日。
ギルドは父王と謁見していた。
父王が座る玉座から離れた所でひざまずいている。
父王の隣には、正装で身を固めたロアがギルドを見下ろしている。
「短刀直入に申し上げます。どうして聖女をあのような場所へ隔離し、魔を倒そうとなさらないのですか?」
「…聖女の塔へ無断侵入し、聖女様と言葉を交わしたのか?ギルドよ…」
「リオールだってそうしていた事です。それに…リオールの意志でもあり、彼は私にそれを託しました」
リオールと聞いたロアの顔色が蒼白になっているのに気づいたギルドだが、構わず話した。
「聖女は魔の呪いによって失明しています。その治療方法を探す為に、リオールは旅に出た。その事実を聖女が知れば、どうなるのかは目に見えています」
「ふぅむ…」
「だから…父上。決意なさって下さい。私に、魔を倒せと命じてください!」
「…リオール…様…。リオール様…」
ロアはギルドを見つめたまま、呟いた。
「…そもそも、リオールやそなたが聖女の塔に近づきさえしなければ良かったのだ。魔を倒すだと?では、失敗すれば民衆はどうなる?」
「魔の仕返しが怖くて勇者の子孫なんて務まらないでしょう?!父上!!私に命じて下さい!!魔を倒せと!!」
「…全ては今、平穏である世界の為…。何より我が国の為…。国が成り立つのは世界があっての事…」
「そんなに国が大事ですか?!!聖女はどうなるんですか?!!」
「…聖女には気の毒だが…我が国だけでも、何万という数の民衆や、何千人という数の騎士や兵士を抱えておる。魔を刺激してはならん」
「臆病者の父上はせいぜい、その地位と我が子より大事な国の為に怯えていればいい!!私一人でも行きますから!!!」
「ならん!!そなた一人の為に何万の人間を死に追いやる気か!!何万の人間に恐怖を植え付ける気か!!」
父王は今にも城を飛び出しかねないギルドに怒鳴り、ロアに命じた。
「ギルドを投獄しろ!魔を決して刺激してはならん!!」
「え…あ…………取りおさえろ!!!」
ギルドは逃げ出したが…ロアが放った衛兵に、あっさりと捕まってしまう。
「国王命令です。無礼を…」
「クソッ…!どうして分かってくれないんだ!!父上!!」
地下牢へと連行されるギルド。
その姿を見て、ロアは内心、焦っていた。