月星の王者
□三章:海賊襲来
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死の砂漠と呼ばれているイスダール砂漠も名ばかりで、東へと行くと町に着いた。
港町だけあって市場は賑わい、新鮮な魚介類がそのまま売られていたりさばかれたりと漁師達は豪快に笑っている。
レオスは初めて見る港町に興奮を覚えていた。
「アナビルの町ですね。潮風が気持ちいいな…」
リュシオンが潮風でなびく長髪を耳に掛け、言った。
「財宝を探す為の船を確保しないとな。酒場はどうだろう」
「いいですね。ラーザ、よろしいでしょうか?」
「ああ。行こう」
三人は町の中央にある大きな酒場に入った。
まだ午前様だというのに、男だけが豪快に賑やかにビールを飲んでいるようだ。
「…ちょっと嫌な予感がするな…」
ラーザがそう呟いた。
「え?」
「そうですね…。ラーザ、ドンキさんと荷物が心配です」
「ああ。俺が見ておくから、船の方は宜しく頼むよ」
ラーザは酒場を出てドンキと待機することに。
「どうしたんだ?」
「レオス。朝からお酒を飲んでいる…ということは、彼らは海賊である可能性が高いんですよ」
「か…海賊…?」
海賊は、連絡船や客船を襲い、金品を強奪して私腹を肥やす物騒な奴等だ。
しかし、中には義賊として活動する良き海賊もいるという。
「酒場のマスターから話を聞いてみましょう。私に話を合わせて下さいね」
「あ…ああ…」
二人はカウンターに腰掛けた。
「いらっしゃい…。何になさいますか?」
「マスター。俺達は財宝を探す為の船が必要なんだが…協力してくれそうな奴を知らないか?」
「財宝…?場所にもよるでしょうが…」
リュシオンは例の宝の地図を取り出し、マスターに見せた。
「この場所なんだが」
「その場所は…死海ではないですか!そんな所…か…海賊だって協力しませんよ!」
「死海?」
「その名の通りですよ…。塩の濃度が高くて船から落ちたら即死、また言い伝えがあります…。悪魔が舞い降りた時、真っ赤に染まると」
「面白いな」
「面白いものですか!死海に行って生きて帰って来られたのは、ホワイトシャーク団という海賊団だけなんですから!」
「ホワイトシャーク団…?聞いたことがないな…」
「あなた方…どういうつもりで財宝を…?」
マスターが訝しげに二人を見つめた。
「ああ、俺達は孤児院の為に財宝を盗りに行くんだ。それまでは細々と働いていたんだが、あの人数
を養うのは難しくてな」
「兄さん方の、そんな細い体では無理でしょう…」
「コイツがまた強くてな。リデーベルからここまで魔物を一撃でのしやがったんだ。見かけはひ弱だが、腕は確かだ」
リュシオンは親指でレオスを指した。
「そこまで仰るなら…。ただ、ホワイトシャーク団には近付かない方がいい。兄さん方が男性なら尚更、関わらない方がいい」
「何故だ?」
「奴等は宝の他にも、男性を誘拐するといいます。逃げて来た男性全員が言いました。奴等の性癖は異常だと」
「…ホワイトシャーク団は女集団なのかな…」
レオスが呟く。
「いいえ、男集団です。なので、一人でいない方がいいですよ。集団で現れて誘拐されてしまいますから。今までもそうでした」
「…そう…。忠告感謝する」
リュシオンはレオスに耳打ちした。
「ラーザが心配です。一旦出直しましょう」
「そうだな」
二人が酒場を出ると…。
ラーザとドンキはいなかった。