月星の王者
□序章:月王と星王(全17ページ)
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凡そ300年もの昔。
突如、闇の支配者を名乗る暗黒の騎士ルダーが現れた。
そいつは妖術に優れ、力で世界の南部にあるエファ大陸を掌握。
掌握するまで二晩を要さなかったという。
それと同時に奇跡が起こった。
満月の夜、赤き流星群がエファ大陸の空一面に降り注いだ。
その日に誕生した男女の双児の胸には紋様が刻まれていて、人並み以上の才を持っていたとされた。
男女の双児は当時の肩書きから「星の王」「月の王」と呼ばれ、神により授かった武具を身に付けルダーを倒した。
月の王がルダーとの戦いにより命を落とした悲しみにより、星の王は自ら命を絶った。
しかし、ルダーを倒したお陰で世界は平和に満ちた。
…かに思われたのだが…。
世界の南部にあるエファ大陸。
この大陸を統治しているのは、北王国リディアと南王国エレクート。
二国は300年前に起こった「月星戦争」からより親交を深め、お陰でエファ大陸に住まう人々は豊かな暮らしを送っている。
北王国リディアには跡継ぎとなるべき男性がおらず、王女は結婚を急かされた。
たまたま王女が北方の大陸へ視察に赴いた際に一人の男性と結ばれ、男性が国王として国を治めていたのだが…。
王妃が赤き流星群が降り注ぐ満月の夜に子を産み落とした直後。
国王は、生まれついた病により他界してしまったという。
現在は王妃が女王となって、やむなく国を治めている。
その「王位継承者」である子は、300年前の「月星の王者」の証である紋様を胸に生まれてしまう。
しかも、その子は女児だった為、300年前に起こった「月星戦争」の転末を恐れた女王は、その子を王子として教育を施した。
そう…。
月星の王者である証…紋様を胸に生まれたということは、神による掲示。
つまり、暗黒の騎士ルダーは死んではいなかった。
女王はすぐに南王国エレクートに相談を持ち掛けた。
すると、エレクート王国でも赤き流星群が降り注いだ満月の夜…。
女王が女児を産み落とした同じ日に、紋様を胸に男児が誕生していた。
だが、女王は自分が産み落とした子を「王女」だとは言わなかった。
なので、エレクート王国は「男女ではなく男同士だった」と安心し、今日まで平和を保ってきた。
だが、同じ日に誕生した双児が16歳を迎えた日。
運命の歯車は動いた。