精霊伝説
□災いを招く者(全14ページ)
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全員が無言だった。
最初に沈黙を破ったのは、ヘレンだった。
「…俺は、口先だけの人間だ」
ヘレンダ達は驚いてヘレンを見た。
「世界を救うとか、格好良いことばかり言って…結局は逆の立場を作り上げている元凶だ」
「違う。あなたは、常に命がけだ。それを理解しない世界がおかしいんだ」
アーデが言った。
「そうだよ。あなたは立派な人間だと思うよ。名声なんかにこだわらず、死と隣り合わせなんだ。邪精霊ガイターを倒して見返してやろうよ」
レンディは拳を鳴らした。
「…やはり、ヘレンダは連れては行けないな…」
「…どうして?やっぱり…まだ子供だから…?」
ヘレンダは唇を震わせた。
「これが世間というものさ。怖いだろう?」
「…うん。けど、僕が許せないのは、邪精霊ガイターだ」
ヘレンダは立ち止まり、三人に振り返った。
「邪精霊ガイターは、お父さんから沢山のものを奪ってる。そんなの許せない。お父さんは頑張ってるのに」
「…ヘレンダ…。ありがとう。憎まれているのかと思っていたが…」
「お母さんが言ってた。お父さんは強くて優しいんだって。その通りだったから、僕はお父さんみたいになりたいよ」
「…俺のように…か」
ヘレンの目は、何処か悲しみを帯びていた。
「…変だな。嬉しいはずなんだが…」
「アハハ。良かったじゃないか。息子に見捨てられなくて」
「ああ。本当に…そう思う」
一行は森を西に進み、街道へと出た。
早速、魔物が現れた。
「エルファイッ!」
ヘレンダは炎を投げつけた。
急所を突いたのか、魔物は倒れた。
「エルファイの威力が上がっている…?」
「一体、いつの間に強くなったんだい?」
ヘレンとレンディが驚く中、アーデは何かを考えていた。
「もしかしたら…これは、金の卵かも知れませんね」
「え?」
「ヘレンダなら…邪精霊ガイターを倒せるかも知れない、ということです」
ヘレンダは喜んで笑顔を向けた。
「今はまだ未熟ですが、この短期間の成長…才能ですかね。鍛えれば我々よりも強くなる」
「本当かよ…。アーデが言うんなら、そうかもだけど…」
「えいやッ!」
ヘレンダは剣を振って、魔物を斬りつける。
魔物はまた倒れた。