精霊伝説
□災いを招く者(全14ページ)
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ヘレンダは憎悪の眼差しを向けた。
「…お前が元凶か!」
「そうともそうとも、ヘレンのこせがれよ。貴様は邪精霊ガイター様にとって脅威となると聞いたが…何だ、本当にガキじゃねぇか」
牛は舌舐めずりした。
「…お前のせいで…」
ヘレンダは立ち上がり、剣を構えた。
「おう?俺様とやろうってのか?」
「…お前がカナを殺した…。絶対に許さない!!!」
「丁度良い。貴様も村の奴ら同様に食ってやらあ!!」
ヘレンダは剣を振りかざす。
牛は蹄で剣を弾いた。
「喰らえ!!」
「!!」
牛は炎を吐いた。
しかし…ヘレンダは無傷だった。
「えいやぁあッ!!!」
「グッ…我の炎が効かないだと?!!」
牛は跳躍して様子を見る。
そして、気付いた。
ヘレンダが身に付けている精霊石に…。
「炎帝の精霊石!!ならば…」
牛は口を開けて、氷の玉を生み出した。
「我の最大級の技を喰らうが良い!!!」
氷の玉が放たれ、その速さに避けることが出来なかった。
「うああああ!!!!」
全身を叩きつけられ、起き上がることが出来ない。
激痛と共に、何か熱いものが背中をドクドクと濡らす。
牛の顔が間近に迫り、頬を舐められた。
「人間のガキの肉は、柔らかくて美味いからなぁ…。一石二鳥だぁ」
「…る…ふぁ…」
「あん?何を言ってやがんだ?」
「…エルファイッ!!!!」
ヘレンダは両手を牛へと突き出した。
「あぢゃぢゃぢゃぢゃ!!!」
毛を燃やされた牛は飛び退いた。
「貴様ぁ…許さんぞ!」
「人の息子に何をした!!!」
いきなり、牛の体はまっぷたつになった。
「な…」
「ミノタウロスごときが…」
ヘレンが魔法剣で牛を倒したのだ。
「ヘレンダ!しっかりしな!」
レンディが魔法を掛けてくれたので、痛みがなくなった。
ヘレンダは起き上がり、レンディの腕を掴んだ。
「カナを助けて!」
「え…?」
「…この娘のことかい?」
アーデがカナの様子を見ているようだ。
ヘレンダは慌てて駆け寄る。