精霊伝説

□災いを招く者(全14ページ)
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燃え上がる家屋の間を走った。


「カナ!!カナッ!!」


村長宅の側に、変わった色のリボンが落ちていた。


ヘレンダはリボンを拾いあげ、見つめる。


これは、カナの誕生日にと贈った物。


それからカナは、ずっと身に付けていてくれていた。


ヘレンダは辺りを見回した。


「カナ!!」


「…だ…誰か…居る…の…?」


業火の音に混じって、か細い女性の声が聞こえた。


「カナ!!!」


「…誰…か…」


ヘレンダは声の元へ駆け寄る。


土砂が崩れてきたのだろう、山になっていた。


ヘレンダは土砂を掻き除ける。


「カナ…嘘でしょう…?嘘だって言ってよ…!」


土砂の間から、人間の指が見えた。


ヘレンダは土砂を掻き除け、その手を引いた。


ズズッ…と重々しく出て来たのは…。


血にまみれた、カナだった。


「…何で…何で、こんなことに…」


ヘレンダはカナを横抱きに、座り込んだ。


「…三英雄の…ヘレンの子供が…この村に…居るんだろうって…いきなり…」


「どうして…」


「…ヘレンの子供が…仕返しに…来るから…きっと、怖いのね…。そんな風なこと…言ってた…」


カナは涙が流れるヘレンダの頬に触れた。


「…カナ…大丈夫だよ…。助けて…あげるから…」


しかし、カナは首を弱々しく振って。


ヘレンダの手からリボンを手に取った。


「…ヘレンダは、染め物が上手だよね…。私、お気に入りなんだよ…」


「カナ…喋っちゃ駄目だよ…。血が…出てる…」


「…私ね、ずっと…ヘレンダが好きだったんだよ…?」


「何を言って…」


「…おかしい…よね…。私の…方が、お姉さん…なの…に…」


カナは微笑んでいた。


「…カナ…。痛いでしょう…?何で、笑ってるの…?」


ヘレンダは次第に冷たくなっていく体を抱き締めた。


「…最後に…会えて…良かっ…た…」


カナの全身が重くなる。


「…カナ…?」


ヘレンダはカナの寝顔を見て…。


涙がとめどなく流れる。


「貴様がヘレンのガキか!」


ヘレンダは慌てて振り返った。


漆黒の牛が、二本の足で立っている。
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