精霊伝説
□災いを招く者(全14ページ)
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ヘレンダは黙ってアーデを見上げた。
「どうかしたのかい?」
「…アーデさんは、どうして精霊石を封印したの?邪精霊ガイターに狙われるの嫌なのに」
「…さすがに気付いたか…」
「え?」
「いや…」
アーデは頬を掻いた。
(馬鹿ではないらしい。さすがはヘレンの子か…)
ヘレンダが首を傾げると、アーデは苦笑した。
「私の父は、奴に殺された。悔しがる顔を見たいんだ」
「…意地悪ですね」
「そうでもしなきゃ、腹の虫が治まらないからね」
「?お腹が空いてるんですか?」
「…あのな、これは言葉のアヤで…イライラが治まらないということなんだよ」
「?」
「…まあいいか。ヘレンダは良いのかい?私達に付いて来たりして…。まだ死にたくはないだろう?」
「死にたくないけど…尚更、行かなきゃ。今よりも、もっと強くなって倒せば死なない。でしょう?」
「確かに…。君には時々、納得させられてばかりだ」
アーデはヘレンダの頭に手を置いた。
「ヘレンを悲しませるようなことだけはしない方が良い。無理はしないで、面倒なことは大人達に任せておけば良いんだから」
「でも、そんなのは…ただの甘やかしです」
「そうだね。そうだけど、君は甘やかされて当然なんだ。まだ子供なんだから」
アーデはヘレンダの頭に置いていた手を除けた。
「さあ、子供はもう一眠りしなさい。体力が持たないぞ」
「…はぁい…」
ヘレンダは大人しく、眠りについた。
(…やれやれ。どっちが子供なんだか…)
アーデは胸を押さえ、眉間に皺を寄せた。
(…畜生…私に何か恨みでもあるのか?精霊石よ…)
ざわざわと森の木々が音を立てて揺れた。
「…ん…アーデ?」
レンディが飛び起きて、駆け寄る。
「…また発作か?」
「ええ…。大丈夫、治まってきましたので…」
「…あんまり驚かせんじゃないよ…。しっかし、厄介だね」
「…すみません…」
「何言ってんだい。精霊レイカに言って、さっさと精霊石を取り出してもらうんだよ。そうしなきゃならなかったあんたは被害者なんだからね」
「…ありがとう…姉さん…」
「面倒かけんじゃないよ、ったく…」
レンディは立ち上がり、水を汲みに行ったようだ。