聖者と覇者
□聖者と覇者(全4ページ)
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人間の姿に慣れたウィガルドが、リオールと共に帰国した。
二人は各国を訪れ、外交の役目を果たしていたのだ。
知らせを受けて、二人はギルドに会った。
「ディルス。様子はどうだ?」
「精神崩壊が始まりました。気安く触れないで下さい」
ディルスの顔面は腫れていた。
ギルドは眠っている。
「病的なものなら治せるかもな。早速医者を探そう」
「私は薬草を探す。ディルス殿、ギルド殿を頼む」
「ああ……」
各国の医者や司祭が集い、ウィガルドの薬草を飲ませたり貼りつけたりした。
だが…。
何年経っても、十年経っても、ギルドの病は癒えなかった。
しかし。
いつでも側にいたディルスのお陰で、ギルドは兄王リオールの片腕となって国を支えた。
ロアとセリルの婚儀が決まり。
彼がフォルスタン国王の地位に就いたのをきっかけに、リオールはギルドに新たな国を与えた。
新生王国ギルヴァ…。
バシュリッツ国とフォルスタン国の友愛の証として…。
リオールの、ギルドに対する友愛の意味も込めて与えた国だった。
王妃となったギルドの恋人ミラナは、生涯家族も国も愛した。
盲目、失声のギルドは……。
我が息子が成人を迎えると、王位を委ねた。
そして…。
自らは、行き場のない老人や孤児達を引き取る施設を作り上げた。
更に、国を脅かす国家との戦争にも参戦し、覇王と崇められた。
かつて世界を救った聖者達と、覇者ギルドは世界を統一し…。
彼らが世を去った後、彼らの遺児達は銅像と巨大な壁画を建設した。
戦いに使用された幻の玩具の数々も、覇者ギルドにより厳重封印されて、今は鑑賞用として人々の目を楽しませている。
聖者と覇者。
特に、双子の王子の物語は広く吟われ…彼らは伝説となった。
「さあ、バルラ。見てごらん。今の、この世界は人間によって再生されたんだよ」
「うん。人間ってすごいね。お父さん」
神となったウィガルドは、空の上から世界を見守った。
我が子と共に。
「お父さん。女神イリア様の所に行かなきゃ」
「そうだね。久しぶりにあの方達の話をしたいな」
ウィガルドは小さな竜の頭を撫でて、共に飛び去った。
地上で、聖者と覇者の物語を吟う為に…。
〜FIN〜