聖者と覇者
□決戦(全10ページ)
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「これは…」
「一体…?」
そして。
ギルドとリオールの全身が光を帯びた。
「…リオール…」
「なんだなんだ!?まだ何かあんのかよ!」
「……………」
ギルドは…。
いつの間にか立ち上がっていたバルラに剣を向けた。
「魔のような奴が二度と現れないよう…俺は貴様を倒す」
「…神である私を…か?」
「そうだ。魔が現れなければ…俺達がこんな所まで来る必要などなかった。ディルスが死ぬ事もなかった」
ギルドは剣を構える。
バルラは…胸に手を当てた。
「…私…神は、死者の魂を呼び寄せ…潜在魔力を食らうという連鎖で生きている。ディルスもまた、今…我に食われようとしている」
「…貴様…!」
その時。
銀竜がいた辺りから…人影が現れた。
バルラと瓜二つの青年だ。
片足を引きずり、血を滴らせながら翼を広げ…バルラの目の前に座り込んだ。
「…ウィガルド」
「…バルラ…。さあ…殺せ…。我は…また貴様を殺そうと…画策するであろう…」
ギルドは静かに青年の元へ歩み寄る。
「…ウィガルド…って言うんだ…」
ギルドは、魔であったバルラと瓜二つの青年を抱いた。
「…親に愛されない子供は…どうすれば親に認めてもらえるんだ?」
「………」
リオールが、聖剣を掲げてウィガルドの傷を癒す。
「…何故だ?我は…」
「俺も…実の親に殺されそうになった事があるから、分かるんだ。すっごく怖くて…寂しくて…悔しくて。でも、死なんて他人が強要できるものじゃない。俺達には生きる権利があるんだよ、ウィガルド」
ギルドは笑った。
そして…バルラを見る。
「バルラ…確かに、あんたは凄いよ。けどな…神だからって、他人の命を手玉に取れるのとは違うだろ?」
「…私は、人間の為ならば…ウィガルドを殺すのに躊躇いはなかった。だが…何だか…苦しいな」
「それ、後悔してるんだよ。もう一度やり直せないかな…。だって、ウィガルドともっと分かり合いたい」
ギルドが流す涙を、ウィガルドは舐めた。
そして…バルラを見た。
「バルラ…」
「そうだな。ウィガルド、お前が持つ人間の潜在魔力を餌にした、その力を渡せ。父の奇跡を披露してやろう」
大人しく、ウィガルドはバルラに力を結晶化させて手渡す。