聖者と覇者
□決戦(全10ページ)
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〔何故、我を殺そうとした…〕
銀竜の口の端から冷気が漏れる。
バルラは、なおも平然と銀竜を見据えていた。
「いずれ、こういう事態になっただろう。それを防ぐ為だ」
〔詭弁だ。全ては、貴様が我を手にかけなければ良かったのだ…〕
「…貴様は、生まれた時から…セリルを憎んでいた」
銀竜は牙を剥き出した。
「…セリルは、私の後継者としてふさわしい魔力と姿を持って生まれた。だが…貴様は違った。私の才を、ひと欠片も受け継いでいなかった」
〔…許さぬ…〕
「…力を奪われ…転生された時に気付くべきだった。これは、神である私の失態だ。貴様は…私が、この手で葬ってくれよう!!!」
バルラは、四枚の翼を持つ青年に姿を変え…。
銀竜めがけて魔力の珠を生み出し、投げつけた。
〔ならば、我も再びその魔力を頂くまでだ!!!死ね!!!〕
銀竜とバルラの戦いを傍観していたギルド達は…。
武器の切っ先をバルラへと向けた。
それを見た双方は、攻撃の手を止める。
「…人間よ…。ここまで来て、諦めるのか?」
バルラは言った。
ギルドは、炎をバルラめがけて投げつけた。
バルラはそれをかわし…怒りの表情を向けてきた。
ギルドはバルラを睨み…銀竜をかばうように両手を広げ、仁王立ちした。
「やめだやめだ!!!話聞いてりゃあ…バルラが全面的に悪いじゃねぇか!!!」
「何…?」
「後継者にふさわしくない力がなかったから我が子を殺そうとしただ?!!!ふざけんな!!!子供は親を選べない!!!親の期待に応えたくても、親が愛してくれなきゃどうしようもねぇだろうが!!!!」
「ギルド…」
「そうだよ!!!俺は双子の兄貴のリオールが憎かった!!!俺がいくら努力しても、親は俺に愛情を向ける所か…さげすんでいたんだ!!!俺は魔と同じなんだよ!!!」
ギルドはバルラめがけて、稲妻を降らせる。
バルラはそれを身を翻してかわした。
「バルラ…。あなたがそんな事を考えてたなんて…。見損ないました」
セリルは静かに怒りをあらわにしていた。
「ギルドとリオールは分かり合えた。私と魔も、分かり合える。そうは思わなかったのですか?」
「セリル…。お前は、いずれこやつに殺される運命にあったのだぞ…?」
「結果は、先に出せるものではありません。障害を乗り越えてこその結果なのです」
セリルは銀竜の側へ歩み寄った。