聖者と覇者
□決戦前夜(全7ページ)
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双子は、ディルスに相談した。
「リオール様、種無しなんですか?国の将来が本気で心配になってきましたね」
「わぁん…罰が当たったんだ…。セリル以外の女と寝たから、罰が当たったんだ…」
「…リオール…」
セリルは、悲しいような怒っているような、複雑な表情でリオールを見つめていた。
「しかし…ロアが禁断の魔法を使って魔に致命傷を与えたから、呪いはもう解けたんでしょう?」
そう…。
セリルの視力は回復し、リオールの聴力も回復した。
呪いはもう無いはずだ。
「じゃあ、また子作りすれば妊娠するかな!?」
「それはどうでしょうねぇ。そういえば…バルラも良く食べていましたが、ウンチは何処へいったのやら」
ディルスは腕を組んで眠っているバルラを見た。
「私は、人間の体の仕組みをほとんど知りません。だから正直、あなた方がどうして食事をするのか、また食事をした後に、何故排泄を行うのか理解出来ません」
それに…と、セリルは彼らを眺めた。
「あなた方のお体を伺うまで、男性がこれほど大きな存在である事など、知るよしもなかった。前世の記憶はあっても、私はもう…かつての勇者がどんな顔をしていたのか、何をしていたのか思い出せないんです」
「聖女は人間ではない。だったら、今まで…どうやって今日まで子孫を遺して来れたんだ?」
ギルドは首を傾げる。
「そりゃあ、人間と同じだよ。結婚して子供を生んで…。アレ…?何か変だな…」
リオールも首を傾げる。
ディルスが一つ溜め息をついて、セリルの肩に手を置いた。
「聖女。つかぬことを尋ねるが…」
「はい。何でしょう」
「…排卵をご存知か?」
「え?」
「子孫を遺すには、絶対条件でしょう。我々人間の伝承には、聖女を汚せば神の天罰がある…と言われている。なのに、前世のあなたは…一体、何処の誰と子を成したのだ?」
セリルは目をぱちくりさせて、考える。
「…覚えてません」
「んー…ごめん。俺も覚えてない」
リオールは頭を掻いた。
「何か、変だな…」
「そうですね…。二人の聖女…欠けた前世の記憶。私なりに、少し考えてみます」
ディルスは腕を組んでフェンリルに寄り添う。
ギルドは火を起こし、調理を始めた。