聖者と覇者

□決戦前夜(全7ページ)
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小さな古城が見えて来た辺りで、セリルが結界を張った。


「今までよりも、潜在魔力が向上したようです。安心してお休み下さい」


一向に目を覚まさないバルラを外套に包んで安静にさせる。


「じゃあ…俺、トイレ」

「あ、俺も」


双子は用を足す為に辺りを見回すが…。


「…どこでしようか」


森もなければ、岩影もない。


「仕方ない。崖で」


古城の横に、崖がある。

そこは世界の果てを思わせた。

足した用は、海…ではなく奈落へと落ちていくようだ。


「リオール。セリルの事…」

「ん?うん…今でも好きだ。けど…セリルの為を思うなら、諦める。それが一番だ」

「バルラもそう言ってたしな…。何、女なんて世界中ゴロゴロしてる…?」


ギルドは何かを思い出したように、リオールを見た。


「セリルは確か…排泄しない」

「ん?そうだな」

「お前…ちゃんと食って、出すもの出してるよな?聖女なのに」

「そういえばそうだな。何でだろ」

「セリルは、生まれつきの体質だって言ってたぞ」

「生まれつきの体質…。じゃあ、俺のもかな」

「何が?」


ようやく双子は用を足し終えて、泉を探した。


「ギルド…。俺、王になれないんだ」

「何で?」

「その…。子供が作れない。俺には、種が無いんだ」


ギルドは口を開けたまま固まった。


「そ…そんな顔で見るなよ…」

「あ…ああ…いや…。種が無い?誰だよ…んな事言ったのは…」

「旅をしていた時に、俺…我慢出来なくて、女と寝たんだよ。セリルは聖女だから、手が出せなかった。だからウックツでさ…」

「うん…」

「どいつも妊娠しやがらない。おかしいなって思って、神父に相談したら…種が無いって…。な〜んかさ、本当ダブルショックだよ」


小さな泉を見つけた。

相変わらずバルロス現象に冒されている泉だ。

リオールが裸体を投げると、泉は瞬く間に本来の姿を取り戻した。


ギルドは泉で手を洗い、裸体でくつろぐリオールを見る。


「魔の呪い…だったりして」

「まっさかぁ…」


双子は顔を見合わせ、慌てて陣営へと戻って行った。
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