聖者と覇者

□思い出(全8ページ)
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目が覚めたギルドとリオールもサッパリして、腹八分目にと飯を食べる。


「腹いっぱい飯が食いたい…」

「魔を倒すことが出来たなら、それも叶いますよ」


落ち込んだギルドを、ディルスが励ました。


まだまだ体力や魔力が回復しないので、休息に徹する他なかった。


ギルド達は早めに就寝し……。


ディルスは、いなくなった王妃の事が気掛かりになってまた牢獄へ赴く。


セリルが眠る隣で、竜の姿でバルラが眠っている。

ロアが武器に付着した魔物の血や体液を拭き取っている隣に腰掛けたリオールは、コックリと首を傾ける。


「リオール様。お疲れですね」


だが、リオールには聞こえず、彼の方も唇の動きを読めなかったようだ。


再会してから、リオールのウックツは募るばかり。


話したい事は、沢山ある。


リオールは立ち上がり、荷馬車を出て遠方を見つめる。


「リオール様…?」


ロアは心配そうに見つめた。


「………ッ!…………ッ!」


リオールは必死に声を出そうとしているようだった。


「………ッ!………ッ!」


リオールは涙を流しながら、懸命に話をしようと努力している。


しばらく見つめていたが……。


ロアは駆け寄り、リオールを背後から抱いた。


「…いいんですよ…。声がなくとも…リオール様は…俺が守ります」

「…………」


リオールは、悔しい思いに押し潰されそうだった。

たまらず、ロアにすがりつく。




双子の王子が幼い頃。

貴族の子供にいじめられたと言って、リオールが泣きついて来たことがあった。

まだ、騎士として…大人としてのケジメを学んでいなかったロアは、当然怒った。

そして、貴族の子供を殴ってしまった。


今思えば恐ろしいことだが、その時の国王の笑顔は忘れない。


『リオールも見習って欲しいなぁ』


まだ泣いているリオールの頭を撫でて『悪い奴はやっつけたから大丈夫だよ』などと言ったりしたものだ。


ロアは、涙を流すリオールの頭を撫でてやった。


そして…よりいっそ、命をかけてでも守り抜くと誓った。
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