聖者と覇者

□二人の聖女(全6ページ)
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結局、聖女が目を覚ましたのは昼過ぎだったのだが…。


「聖女。大丈夫ですか…?」

「ありがとう…ロア様。私は大丈夫。眠れば魔力は回復しますので」

「その眠っている間も、回復するべき魔力を放出させているんでしょう…?今も辛いはずだ」


ロアのその言葉に、聖女は驚いたが……微笑して体を横たえた。


「ロア様……」

「安心してお休みください。皆もいます」

「あり……がと………」


聖女は瞬く間に深い眠りに落ちた。




聖女が次に目を覚ましたのは、三日後。

次の水場に到着した時だ。

ここまで、実に三日を費やした。


ついにロアの愛馬、イレイザが倒れてしまう。


「イレイザ…!」


ロアはすぐに治癒魔法を施してやるが、肉体的な疲れには効果が得られなかった。


「ロア様。私が…」


聖女が駆け寄って来るが、ロアは首を振る。


「貴女は私達の為にオーラを強めている。魔法を使ったりすれば、命に関わるんじゃないんですか?」


そうなのだ。


聖女の顔色が優れない。


「リオール。聖女に代わってオーラを…」


ギルドが提案するが、リオールは首を横に振る。


「リオールには潜在魔力が備わってないから無理のはずよ」


聖女が言うと、リオールは頷いた。


「聖女…。せめて、オーラを弱めては?」


イレイザの体を撫でながらディルスが言う。


「承知しました…」


聖女がイレイザの体に手を置き、治癒魔法を施してやる。


聖女の治癒魔法は肉体疲労にも効果的のようだ。


「…リオール様が居るせいか…前ほど吐き気がないな…」


ディルスはそう言って胸焼けを堪えた。


イレイザは立ち上がり、ロアの肩を咬んだ。

馬の愛情表現だ。


「聖女、ありがとうございます…」

「イレイザを、よほど大事にしておられるんですね」

「ええ」


イレイザの代わりに、クロノスが荷馬車を引くことになった。


「フェンリル。よそ見しない」


ディルスが叱る。

フェンリルはイレイザが気になるらしい。


「さあて…。夕食の支度でもしますか」


ディルスが夕食の支度を始め、リオールが手伝う。

ロアは馬の世話、聖女も手伝い治癒魔法を施してやる。


ギルドは荷馬車の中で魔法書を読みふけっている。


禁断の魔法書…。


ギルドは、とにかく…いざという時の為に使えるようにしなければ…という一心で、魔法書を読みふけった。
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