聖者と覇者
□奇妙な鳥(全2ページ)
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ディルスが出立すると、奇妙な鳥は涙を流して泣いた。
「お前も心配なんだな」
ロアは自分の部屋へ、奇妙な鳥を連れ帰った。
奇妙な鳥は部屋の隅で震えている。
「ピギュゥ…ピギュゥ…」
「あんまり世話を妬かせるなよ」
溜め息混じりにそう言い、ロアは奇妙な鳥を抱えて入浴を始めた。
奇妙な鳥には堅い鱗があり、その隙間にゴミが溜まってしまう為に軽石で体をまんべんなく磨いてやる。
「ピギャッ。ピギャッ」
奇妙な鳥は喜んでいるようだ。
入浴を済ませ、ロアが寝台に入ろうとすると奇妙な鳥はキョロキョロと寝る場所を探す。
いつもは籠の中で眠るのだが、その籠が見当たらない。
だが…。
「ほら、来い」
ロアが両手を広げ、呼んだ。
奇妙な鳥は自然と、横たわったロアの腕の中で眠る形になった。
「……庭を歩いていた時に、卵が降ってきたと言っていたが…果たして本当だろうか」
「ピギュ?」
ディルスが奇妙な鳥を育て始めて、三ヶ月目が経つ。
その間、何度かこうして預けられることがあった。
奇妙な鳥は、ロアに怯えた様子だったが…。
こうして抱いてくれ、柔らかく優しい気持ちになれることが、好きだった。
ディルスは、眠る時もロアのように抱いてくれない。
奇妙な鳥は、どうして…?というように、首を傾げるだけだ。
「……おやすみ」
「ピギュウ………」
ロアの寝息が聞こえると、奇妙な鳥も夢の中へと誘われた。
〜END〜