月星の王者
□序章:月王と星王(全17ページ)
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レオスは仕方なく聞いてやることにする。
「女王は先代が亡くなったので、やむなく国を治めてはいますが…それもいつまで続くか分かりません」
「………」
「ですから、先代の血を受け継いだ男性であるあなたが即位なさる必要があるのです。お分かり頂けましたか?」
「…理屈は分かる。けど、俺には権利はないのか?俺は国王になんてなる気は、これっぽっちもねぇぞ」
「残念ながら…権利を通せる立場ではないのです。分かって下さい、王子…」
「信じらんねぇ。タダでさえ…」
言いかけて、レオスは口を閉じた。
「どうかしましたか?」
「い…いや…。それより、早く訓練しようぜ?昨日のアレ、今日中にマスターしてぇんだよ」
「はいはい…」
家臣は国の将来を心配しながら、レオスにいつもの教養を与えた。
夕日が昇った頃。
剣の稽古を終えたレオスは私室へと戻り、汗だくになって不快な衣服を脱いだ。
身に付けている物を全て取り、浴室へ足を踏み出す。
浴槽に張られた水は上流から流れる清水で、いつでも浴槽には綺麗な水が張られているのだ。
浴槽に身体を浸し、泳ぐ。
汗だくだった全身を洗い、浴槽から上がり…。
「…?」
ふと気付き、綺麗に磨かれた壁に自身の姿を映す。
乳房の側、鎖骨の下にある紋様を見た。
(…変だな。こんなに黒ずんでたっけ…)
生まれつきある紋様…痣が、いつもより黒く変色してしまっていた。
レオスは絹で痣を擦るが、どうやら汚れている訳ではないらしい。
(別に、痛くもないのに…どうして…)
取りあえず、母親である女王に報告しようと考えた。
衣服を身に付け、部屋を出る。