聖者と覇者

□聖者と覇者(全4ページ)
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――3年後。

バシュリッツ国にて。


「あ〜…忙しい!」

「あんまりドタドタ走るなよ!壁にヒビが…ああ!!」


バシュリッツ国は活気に満ちていた。


バシュリッツ国王となったリオールの呼びかけに応えた人々が集い、復興に尽力してくれたお陰だ。


未だに魔の瘴気によって病に苦しむ国とのいさかいが絶えないが…。

バシュリッツ国は平和そのものだ。


「現在、騎士志願者は受け付けていない!」

「一般兵志願者、及び商店の経営者、商人が必要だ!」


「全く…新人ばっかで仕事になりゃあしない」

「まあ、そう言うなよ。皆お国の為にって一生懸命なんだから」

「わーん!!また割った!!」

「………」


新米兵士や、かつての生き残り達が協力してバシュリッツ国は元より綺麗な姿を手に入れた。




中庭では、双剣の騎士が見習い騎士と手合わせしている。


「さすが…」

「ロア様は強い。誰も勝てないんだものな」


双剣の騎士は、重い兜を脱いだ。


「しかし、潜在魔力に関しては俺よりも上だぞ。お前達」


ロアは言った。


そう…。


ロアはもう、二度と魔法が使えない。


「それって…あの、禁断の魔法の影響ですよね?」

「そうだ。皆、心しておくが良い。優れた魔法は、自身の長所を奪い去るのだ。決して自分に自惚れるな」

「はっ!」

「では、解散!」


ロアは、リオールの頼みで騎士団の団長として復興に尽力していた。

魔境から生還した功績のお陰で、年若い団長と口答えする者はいない。




ロアが城内を歩いていると、一人の騎士が駆け寄って来た。


「ロア様。お勤めご苦労様です」

「やあ、シオン」


シオンは、かつてバシュリッツ国が陥落した以前に、フォルスタン国から来た使者だ。

彼がいなければ、ロアは国が陥落したその日に死んでいた。


「たまには一緒にお茶でもどうですか?」

「ああ、いいな」


シオンはロアの甲冑を取り、お茶を入れた。


「思えば、あなたがいなければ…俺は感情に流され、バシュリッツを発つ前に死んでいた」

「いえ…。随分と成長されました。今のロア様は、あの時に比べると断然落ち着いていらっしゃる」

「ハハハ、ありがとう」


ロアはお茶を飲み、窓から見える部屋を見つめる。


「…もう、どれくらい眠っておられるのか…」

「二年…ですか。あの方が、ずっと看病なさっています」

「…そうか…」


二人は窓の外を、ずっと見つめていた。
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