聖者と覇者
□魔剣ディバイン(全4ページ)
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バシュリッツ国が陥落してから、丸三ヶ月が経った。
ギルドは寝起きに、井戸で顔を洗っていた。
「おはようございます。ギルド様」
若い女性の声に驚いて、振り向いた。
桶を手に、目が合うと微笑む。
白い肌に、瞳は大きく…綺麗な女性だ。
「おはよう。君、村の人みたいだけど…初めて会うね」
「私、昨日帰って来たばかりなんです。もう村を離れるつもりはありません」
「どうして、この村には若い人がいないんだ?」
「皆、夢を追ったり流行を求めたり…。ここ、田舎ですから都会に憧れるんです。私も、その一人なんですけど…」
「もう、都会へは戻らないのかい?」
「ええ…。思い知らされたから…」
女性の顔色が変わったのに気付き、ギルドは申し訳なさそうな表情で首を掻いた。
「何かごめん…。君、名前は?」
「あ…はい、ミラナと申します」
女性…ミラナは桶に水を汲んだ。
「手伝うよ」
ミラナが重そうに持ち上げた桶を、軽々と取り上げた。
「あ…申し訳ありません」
二人が連れだって井戸を去ると。
井戸の背後に隠れていた、ディルスとロアが立ち上がった。
「どうして貴様に付き合わなければならないんだ…」
「いやあ、朝から面白いものを見た。ギルド様、真っ赤になってまぁ…ウブだな〜」
「王子を愚弄するのか?!貴様、それでも騎士か!!」
「ロア…。男が女に好意を抱くことは、罪ではないんだぞ?お前が聖女を好きになっても、誰も責めはしないだろう?」
「お…俺は関係ないだろう!!貴様の話は、イマイチ分からん…ッ」
「おやおや…。そんなに否定しなくとも、私は応援するぞ。いやあ、若いって良いな」
「クソッ…!!何なんだよ…ッ!!」
ロアはそれ以上、反論せずに井戸を離れた。
顔が真っ赤だ。
(生きて戻れないかも知れないんだから…楽しめば良いんだがなぁ)
ディルスはそう思い、苦笑していた。