聖者と覇者

□魔の出現(全3ページ)
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ほこらを出て、それほど歩いてはいない。


あっという間に、紫色の霧で視界を覆われてしまった。


「うわあ!!」


ロアの悲鳴で、一行は最悪の事態に陥っていることに気が付く。


魔物の群れが、荷馬車を取り囲むように次々と襲って来た。


「遥かなる闇に閉ざされし悠久たる道しるべ。今ここに来たれり…」


ディルスが詠唱を行い「火炎」の言葉と共に、周囲に火が立ち昇った。


魔物の群れは悲鳴をあげて灰となり、残りが勢いを増して襲いかかってくる。


「ロア、大丈夫か?!」


ギルドが駆けつける。


ロアは手の甲を舐めて「平気です」と微笑んだ。


「これはちょっと、厄介ですね…」


ディルスが剣を構えて前方を見据えた。


巨大な影が近づき…姿を現した。


牛の頭に、人間のような筋肉質の体…馬のような腕と足…。


「ミノタウロス…」


ディルスが呟く。


「ミノタウロス?」

「人間の手によって品種改良された化物なんです。こんな時に会えるとは、運がない…」


訊いたギルドに説明し、ディルスは溜め息をついた。


ミノタウロスは大地を蹴った。

ビシビシ…と大地に亀裂が走り、左右に裂けていく…。


「物凄い力だ…!」


御者台に飛び乗ったギルドは、クロノスとファルドを操って亀裂を避けた。


「地獄の業火よ、唸れ…風と共に!」


ロアが魔剣ソウルイータを掲げ、叫んだ。


「爆炎陣!!」


ミノタウロスの足元に魔法陣が現れ、炎の柱に呑まれて爆発した。


「やったか…?」


地面に平伏す黒いスス…ミノタウロスへと、ディルスが近付いた。


「!?」


ミノタウロスは目を見開き、フェンリルもろともディルスを巨大な角で払い退けた。


「ディルス…………!?」


そちらに気を取られたロアも、イレイザもろとも角で反対側へ払い飛ばされてしまった。


荷馬車の中にいたリオールが飛び出し、愛馬クロノスの腹を蹴りつけた。


「リオール?!!」


荷馬車はギルドの意思とは裏腹に、勝手に走り出す。


「何?!ねえ、何?!」


聖女が荷馬車から顔を出した。


「分からないけど、聖女は隠れていろ!!」


クロノスとファルドがいうことを聞いてくれない。

二頭は、西へ西へ進路を取って走った。
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