book1

□焦がれる
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美しい人だった。
繊細で、流れるような赤茶の髪を持っていて。
頬は透けるような色に微かな紅を散らし。

まるで、初恋のあの人のようで。

私は心苦しくなってしまうのだ。


「どうした、岱。」
「……従兄上。」
思わず見惚れてしまったのだろうか。
声をかけられた。
「いえ、何でもありません。」
「何かを見ていたな?好みの女でもいたか。」
「いえ、そんな……」
茶化しながら目線を向こうにやる従兄を止めようとした。

ああ、見ないでください。

そう口にしかけたが、遮る理由が無かった。
きっとこの人が、多くの女官の中からあの人一人を見つけるはずも無い。
安堵してしまった私がうかつだったのだろうか。
「……月英殿ではないか。」
思わず、従兄上の顔を睨むほどに見てしまった。
「ん?違うのか?」
この人はどうして、見抜けたのだろう。

もしかして、もしかして。
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