「何やってんの?」
学校の昼休み。
食堂までの通路にある自動販売機の前で藤先輩に話しかけられた。
「えっと、飲みものを買おうかと…藤先輩お先にどうぞ。」
「何がお先にどうぞだよ。金入れてんじゃん。」
「あっ…。」
体の弱い藤先輩を待たしておくわけにもいかないので、私は早く選ぼうと思い自動販売機を見つめる。
並んでいる飲みものはペットボトルが150円で缶は100円である。
缶だと飲みきってしまわないといけないので予め150円入れてある。
どうしよう…お茶でもいいけど、ア〇エリアスとかポ〇リでもいいよね。
「んー…。」
「そんなに悩むもんか?」
「えっ、あっはい。
藤先輩は悩んだりしないんですか?」
「俺は買う前に頭の中でどれ買うか予め予想っぽいのしとくしな。」
「ほへー…。」
確かにその方が効率的には良いかも。
やっぱ藤先輩って頭良いのかな?
「むぎ茶にしよっかな…。」
これ以上待たしておくのは本当にダメなような気がするので、私は目に入ったお茶のペットボトルを押した。
ガコンという音がしたので取り出し口に手を入れる。
「…。」
思わず固まってしまった。
藤先輩を見ると藤先輩は笑いを堪えてるようだった。
「なぁ、確かお茶押してたよな?」
「…はい。」
私の手にはお茶ではなく、サイダーのペットボトル。
一体どうして…。
業者の人が入れ間違いしてしまったのだろうか。
藤先輩に自動販売機を譲り私はペットボトルを見つめた。
これで昼ご飯を食べろというのか…。
「可愛いなぁお前。」
笑いながらポンポンと私の頭に手を置く。
片手には先ほど自動販売機で買ったと思われるお茶のペットボトル。
「交換してほしい?」
ピタッとひんやりとしたお茶のペットボトルを頬にくっつけられた。
「大丈夫ですっ、藤先輩からお茶なんか奪い取りません。」
体の弱い藤先輩からそんなお茶を奪うなんて、どんだけ私は悪魔なんだ。
「奪うって、お前やっぱり面白いな。言ってるだろ?交換だって。お前のサイダーと俺のお茶交換して。」
「でっでもそれじゃあ藤先輩が…。」
さすがにサイダーで薬を飲むわけにもいかないし。
すると藤先輩は私の手からサイダーのペットボトルを取る。
「これ持って。」
「えっ、あっはい。」
藤先輩から渡されたのはお茶のペットボトル。
なにをするのかと思えば、藤先輩はサイダーのキャップを開けそのまま口に含んだ。
「えっ、藤先輩…?」
ペットボトルから口を離した藤先輩はにんまりと笑った。
「俺が口つけちゃったから、これは俺のもんな。」
「でっでも…。」
「大丈夫、保健室でいつも食うけど先生がお茶出してくれっから。」
「はぁ…ありがとうございます。」
藤先輩本当に優しいなぁ。
とても病にかかってるとは思えない。
「どういたしまして。じゃあな。」
片手にサイダーのペットボトルを持ち、片手で私に手を振りながら藤先輩は保健室のある方向に歩いていった。
その藤先輩の後ろ姿が本当にかっこよかった。
「…保健室でお茶出してくれるのに、どうして買ったんだろう。」
残った疑問を頭に浮かべながら私は教室に向かった。
(なぁアシタバ、これ分けて飲もうぜ。)
(なんで?)
END
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