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□愛しい人。
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「・・・あっ!・・・ぁ」

思わず零れた女の子のような声に、コウキは頬を羞恥に染めた。身体が熱くて、頭もとろんとしていて、もう何が何だか分からない。下半身から染みわたる快感が、全てを攫っていく。部屋に響く淫らな水音に、耳まで犯されるような錯覚。

「女みたいな声出すんだな、コウキは」

太腿の間に顔を埋めてまだ小さな肉茎を舌で弄んでいたデンジが、愉快そうに笑った。ぺろり、と見せつけるかのように、口端についた白濁を舌で舐めとる。その仕草が、手の動きが、表情が――そのひとつひとつが脳を刺す。立っていられなくなって、思わず背後の壁に凭れかかった。甘い痺れから逃れようと腰を引くが、デンジが逃がすまいと更に自らの口腔深くに肉茎を咥えこむ。その突然の刺激にコウキの背が弓なりに戦慄き、痙攣を起こしながら大量の精を吐き出した。

「あっ、あ、んッあぁ・・・!はっ、あ・・・」

射精の快感に飛びそうになる意識を懸命に繋ぎとめる。瞼の裏で白い光が散って、涎が口の端からだらしなく垂れた。もう何度欲望を放出したか分からない。手と舌の動きに翻弄され続けて、体力的にはもう限界な筈なのに、次々襲ってくる痺れにその昂ぶりが衰えることはなかった。男性にしては綺麗な指で、薄い胸を撫でられただけで――敏感なソコは、先走りの液を滴らせて再びヒクヒクと反応し始めた。傘の部分を手で包むように揉むと、堪らずコウキが嬌声をあげる。

「ひっ!あぁんっ・・・んんぅっ!」
「さすが若いな。見てみろよ、もうこんなだ」
「デンジさんっ、も、やだぁっ・・・」
「・・・そっか、嫌か」

意地悪そうに微笑んで、動きを止めるデンジ。突然止んだ愛撫に、コウキは無意識に抗議の眼差しを向けた。もっと触ってほしい。もう嫌だ。もっと舐めてほしい。もう終わらせたい。相反する感情がせめぎ合って、頭の中がぐちゃぐちゃだった。中途半端に放置された身体は熱を帯びて、ほんのり上気していた。デンジはコウキの頭からつま先までを舐めるように視姦して、囁いた。

「正直に答えたら、今度はもっと気持よくしてやるよ」

もっと気持よく≠フ意味はただひとつ。これまでの愛撫とは違う、本当の交わりだ。

「コウキは今からどうしたいんだ?」
「・・・っ」
「俺と、したいか?」
「そんな・・・」

あからさまな問いに、コウキは視線をずらした。
正直に言うと、身体を重ねる行為はあまり好きではない。ひとつになりたいという想いは抑えきれないほどにあるのに、だ。だって、どんなに愛しくても、どんなに肌を合わせても、思い知らされるから。自分は子供で、彼は大人。――なによりも自分は男で、女の子のように本当の意味で繋がることは出来ないのだということを。

「何考えてんだ、バカ」
「った!」

不意打ちにデコピン一発。思わず額をおさえると、目の前には憮然としたデンジの顔があった。

「一人でゴチャゴチャ抱え込むなっつったろ」
「で、でも」
「俺はコウキが好きで、コウキも俺を好きでいてくれてるんだろ?・・・それ以上なにがいるんだ」

そう言って、コウキの首筋に吸いついた。滑らかな肌に、赤い印が証のように残された。

(この人は、)

――いつもそうだ。
観念した様にぎゅっとデンジの服を掴む。それが先程の問いの答えだった。けれどデンジはそれでは満足しないのか、首をわざとらしく傾げてコウキの瞳をじっと見つめた。

「口で言わなきゃ分からないぞ?」
「・・・ッ!僕は、・・・と」
「ん?」
「ぼ、僕はっ、デンジさんと――したい、です」

よく言えました、とデンジが白い額にキスを落とす。そしてコウキの身体を軽々と抱きかかえて、寝室へと向かった。コウキが本当に女の子みたいと呟くと、デンジは俺にとっちゃ女以上だよ、と返した。素でこんな口説き文句を言ってのけるのだからたまらない。純白のシーツが視界に入ると、これから繰り広げられるであろう交わりを想像してしまい、コウキの肉茎がぴくんと震えた。悟られまいと口をおさえて俯くが、気付かれないわけもなく。

「コウキはほんっとエロいな」
「な、なにいってるんですかっ!自分のこと、棚にあげといてっ」
「いって!こら、暴れんな!」
「デンジさんの、馬鹿!」

ぶっきらぼうで、無愛想で、意地悪で、エッチで、何を考えているのか分からないこともあるけれど、いつだって一番欲しい言葉を一番にくれる。ちっぽけな不安をあっという間に消してくれる。それが僕の大好きな――とても、愛しい人。

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