小説

□我こそは塵兵衛!!+村+
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「お、おい!!博!!」
「何か用事でも思い出したのかの?」
「とりあえず、後を追って道案内だけでもします。この土地に関してあまり知らない様ですし」
「うむ、行っておいで」
「はい」
私は博の後を追う
全く・・・この辺の土地勘ないのにな・・・
迷子になるのがオチだ・・・
きっと村の中で迷子になっていると思う
ここの村は案外広い
それに同じような風景が所々、存在するから
来たばかりの人間には少々、この村の地形を把握するには時間がかかる
私はここが故郷だから、この村は庭のようなものだ
さて、どの辺にいるか・・・いた・・・・・
何やら、畑の中で頭を掻きむしって呻いている様子・・・
迷ったな・・・言わん事ではない・・・しかも正門とは全く逆方向に向かっている
私は博の元へ駆け付ける
博は私に気付き、安堵の表情を見せる
「雪華じゃん!!良かった!!ちょっと道迷った」
ちょっとじゃない・・・大分間違えてる・・・・・
「あのな・・正門とは全く逆方向だ」
「マジでか」
「マ、マジ?」
聞いた事がない言葉をしょっちゅう喋るな・・・
いい加減、欝陶しい
「本当かって意味。やっぱ、田舎は違うわ」
なるほど・・・参考になるが腹は立つ
「そのまま、路頭に迷って死ね」
私は踵を返し、村長の家に戻ろうとすると
私の肩に彼の手が乗る。
「ちょっと待てって!!オレが悪かったよ」
「田舎で悪かったな」
「別に悪ぃーとは言っちゃいねぇーよ」
「だったらどう思っているか説明してもらおうか」
「別に!!確かに不便な事はあるかもしれねぇーけど、良い所だよ」
「どんな風にだ?」
「ナチュラリーな村だよ。汚ったねぇー都会の空気と比べて、なんだか自然味溢れて落ち着けるし、説明っつても、説明しづれぇーけど、とにかく良い所だよ」
「・・・ナチュラリー?」
「自然って意味だよ」
「面白い言葉を使うな・・少し興味を持った。」
異国の言葉というものに少し興味を持った。
同じ言葉でも言い表し方が国によって違ってくるとは聞いたが
こんなにも違ってくるとは・・・
少し・・面白い・・・
「そこまで、変わってるかねぇー・・・?」
尻尾をクネクネと動かし、頭を掻きながら言う博。
「変わっている」
私は少し可笑しくなって、つい笑ってしまう。
面白いヤツだ・・・
嫌いでは・・・ない
「フフフ・・・」
博は不思議そうな表情をする。
「な、何がおかしいんだよ」
「ちょっと・・な」
よく分からんが、なんか面白いんだ
しばらく笑いが止まらない、こんなに可笑しいのは初めてだ
「フフフ・・・」
「やっぱ笑ってる方が似合ってるよ」
突然、博がそんな事を言い出すので
慌てて表情を元に戻す。
博は穏やかな表情で私を見つめている。
「隠すなよ。恥ずかしい事でも何でもないって」
「・・・そうか?」
「うん」
「・・・出来るだけ笑える様に努力する」
「そんな深くは考えなくても、笑える時は笑えば良いって、そんな難しい事じゃねぇーよ」
「あぁ〜・・・」
不思議なヤツだ・・・
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