君、甘んずる事勿れ。

□第六話
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【君、甘んずる事勿れ】

第六話



有希、桜が生徒会と接触があった二日後、
二人の学年のA組、B組、C組、それぞれに学園祭について、
HRで話し合うことになっていた。



女子A:えー、それでは今日のHRでは、
8月25日、26日に開催される、学園祭についてです。

女子B:屋台、パフォーマンス、何かやりたい事がある
桜くん、のみ、発言を認めます。

桜:(早口)あっはっは。暑さで脳内の水が煮え立ってるんじゃないの?
(切り替えるように)僕は何もないよー。
皆がやりたいものがいいんじゃないかなあ。

女子A:え・・

女子B:あ〜桜くんの気遣い〜 かっこいい〜

女子A:ちょお、B子!ぜ、絶対だまされてるって!

桜:はぁ。ゆーきの所はなにやってるのかなあ。


そこへ教室の扉が開く。
扉を開けた人物は、B組の兄塚教師だった。

兄塚:HR中失礼ー、桜いるかあ?

桜:あ、駄目教師。

兄塚:ダイレクトだな!ダイレクトメールよりダイレクトだな!

ま、まあいい。うちの学園祭の出し物がなあ、 ”対決、有希に挑め”っていう
腕相撲大会やるんだけど、
その景品で桜30分貸し出しチケットってのをばま・・・ッ!


哀れ駄目教師兄塚の顔には桜の名前が書かれた教科書が、次の瞬間、顔に張り付いていた。
見事なその行動を見抜いた生徒は、
無意識のうちに敬礼をしていたという。


桜:いやだなあ、兄塚先生。僕の教科書、返してください。

女子B:そうよ、ひどいわ駄目教師。鬼塚!

兄塚:そんなグレートティーチャー知るかッ!

桜:ふむ・・・・・


桜の右脳、左脳、それにパンピーには備えられていない、
黒い腫瘍にも似た、黒脳と呼ばれる部分がフル回転した。

桜は意地悪く、目を光らせる。



桜:・・いいでしょう。

兄塚:おお!じゃあ30分

桜:(さえぎって)ただし。条件があります。

兄塚:・・・かつてないくらい、いやな予感。

桜:ゆーきがもしも誰かに負けたら、30分、僕をお貸ししましょう。
でも、その代わり・・、学園祭中はもちろん、学園祭準備期間、も
僕をB組にいさせてください。

女子B:ええええええええええ!!ちょ、桜君?!

女子A:そ、そんな事、駄目教師だって許さないわよ

兄塚:いいぞ

女子B:この野郎ッ!

桜:B子さんは、僕の言う事がきけないの?

女子B:桜くふん!全然かわないわあッ

女子A:な、う、裏切り者! 


必死でB子をなだめる英子。
そろそろ名前をつけるべきかで悩むけど、
とりあえず、これで定着させようかと
考えている兄塚。




兄塚:じゃ、桜ー、今からこっちこーい。

桜:先生とB組たってのお願いなら、仕方がないよね。

女子B:桜君、気をつけてねー

女子A:このドアホー!!かえってくんな!




二律背反、矛盾、その他さまざまの
思いをぶつけられながら、桜と兄塚はB組へと向かう。

B組の中では早速、強化された西島VS有希の試合が始まっていた。


横田:有希選手、決まったー!

西島:っつああ・・!ちくしょー!

有希:・・・たて

西島:ぅ・・くそ・・っ(倒れる)


桜:かんかんかーん!ウィナー、有希ー

横田:あ、あれ?!さ、桜くん?!いつの間にマイクを・・

桜:君が持つと、マイクがかわいそうだからだよ。

それより、この僕、貸し出しサービスは誰が考案したのかなあ?(優しげに)


横田:え、あの、その・・・・西島くんです。(きっぱり)

西島:ちょ、あ、え?いや、よ、横田ァー?!



西島に迫る黒い影。
南無三。



有希:・・桜。既に尖った鉛筆で恐ろしい事をしているから言うが、
西島じゃないぞ。提案者は。



ぴたり、と動きをやめる桜。
手からするりと消える鉛筆。
西島は床に崩れ落ち、動かなくなった。



桜:・・あっそ。ま、いいや。

西島:俺の存在意義!?

有希:話は兄塚から聞いていると思うが・・。
お前、景品だからな。

桜:そういう言い方はどうかとおもうけど。まさかその提案者、有希じゃあ、ないよねえ。


有希:・・・・・・(西島を見てから)
・・・・俺だが。



桜:ふうん。紛れも無く、有希なんだね?

有希:そうだ。横田じゃなく、俺だ。

横田:有希さああんん!!



桜:そっかあ。ちょっと残念だけど、後で横田君の机の上に花の入った花瓶を置いておくよ。

横田:ひいいい!!!

有希:桜、カリカリするな。桜じゃなくて梅になるぞ。

桜:・・・・



桜は、ここまで有希をたてるこたないよな、と
思って、ムッとしながら教室から出ようとする。
有希は声をかける。




有希:桜・・?

桜:・・・ゆーき、A組とB組で、学園祭対決を申し込むよ。



横田:おっと、これは予想外の展開。解説の長島さん、どうですか?

西島:西島です。


横田:今までのコンビ、解消の幕開けでしょうか、長島さん!

西島:西島です。


横田:今!歴史が動く瞬間ですね!西島さん!

西島:ながっ・・いや、西島!うん、正解!あってる!



有希:うるせえ。・・桜、一体、何を言って・・

桜:どっちの出し物に人が集まるか。それが勝敗をきめる条件だ。

僕が勝ったら、有希、僕のお願い、一つ聞いてよ。じゃあね。

有希:は?!お、おいッ!


ぴしゃり、と閉められてしまったドア。


その日から、桜は、化けの皮をはいだ。




桜:A組の出し物、僕が決めてもいいんだよね?B子さん。

女子B:はっ、はい・・!いいですう・・

桜:そ。じゃあ、皆、僕らA組は、お化け屋敷をやろうかなって思ってます(楽しそうに

世界で一番・・、怖いお化け屋敷に。(怪しく笑う


怪しい笑みを浮かべる桜に、A組の生徒全員、震え上がったという。



桜:学園祭は、8月の上旬から中旬まで、準備期間です。
学園祭は、25、26が本番です。

その日までに、我がA組は完璧なお化け屋敷を作ります。



女子B:きゃー!桜くうん!

女子A:わー、恐ろしいー



放課後、帰る有希を呼び止める兄塚



兄塚:おーい。有希、お前以外に戦う奴っていないのか?

有希:・・・しらねー。俺と横田と西島以外はステージ作りだからな。

兄塚:お、お前・・それ、大丈夫なのかー?

有希:・・・・・・・しらね。

兄塚:無茶はすんなよ?お前だって一応は女なん・・をばまァ!



見事なアッパーを食らう兄塚。
最近、生徒からの暴行が激しく、
漫画家の彼女にもペン先を誤って突き刺されたり、結構かわいそうだ。
だが、運命だって。フンバ。

兄塚を見下すように睨む、有希。


有希:・・うるせえ。駄目教師。帰る。

兄塚:おい、有希、まだ授業・・あ、もう、放課後かー!
そかー!かえれかえれー


有希:ばーか。・・・!・・桜・・



有希の前を素通りする桜。
声をかけられない有希。



とぼとぼ、と家出少女のように帰る有希を
見かける兄’s。




兄A:お、おい・・あれ、有希だぞ・・

兄B:は?嘘つけ。ちょっと有希に目鼻顔立ち、
体つき、筋肉言葉遣いがにて
・・有希じゃないかーッ!?

兄C:嘘だろ!承太郎!?

兄D:挟み撃ちしよーぜ!



兄A:・・・・ゆーきッ

有希;・・あ、兄さん。(女の子っぽく、普通な感じに

兄B:!・・ふ、普通だッ!

兄C:普通の女の子だッ!



兄A:・・どしたー?今日は桜くんはいないのかー?

有希:いつも、一緒なわけじゃねえよ。

兄B:一緒だよな。

兄C:いつもな。

有希:とにかく・・!今日は、一緒じゃねえんだよ!


吐き捨てるように言う有希に、
兄’sは本格的に心配になる。

有希は、唇をぎゅっとかんだ。


兄D:・・そういう日も、あるよな?有希。

兄A:だな。


兄B:よし、今日は有希の好きなカレーライスにしようか。

兄C:馬鹿、有希の好きなのはハンバーグだよ!

兄D:違うだろ!お好み焼きだああ!



わらわらと、言い合う兄’s。
励ますつもりか、それとも普段どおりかわからない
その対応に、有希は心を動かされて、意味も無く、涙が流れた。



有希:兄さん。


学園祭の、準備が始まる。





【第六話 終了】

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