君、甘んずる事勿れ。

□第一話
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【君、甘んずる事勿れ。】

 第一話



回想

五歳の有希と4人の兄が、
桜の散る公園で話し合っている。




兄A:有希は大きくなったら何になるんだ?

有希:(淡々と)王様

兄B:何の?

有希:(自慢げに)喧嘩の

兄C:さすが、俺らの妹だなあ・・

兄D:にしても、もー少しなあ・・




有希の手にはシャベルと
おもちゃの車が握られていた。

回想終了



放課後の教室
騒がしい、女生徒の声。



女子A:ねえ、B組の有希ちゃんって知ってる?

女子B:(雑に)誰それ。

女子A:何か、超怖い子で、めっちゃ男っぽい子だよー

女子B:知らんし、ってか興味ねえー

桜:・・ごめん、ちょっと失礼。

女子B:(急に女っぽく)あ、ごめんね、桜君

桜:ん?あぁ・・大丈夫だよ(小声で)ドブスさん。

女子A:・・・え。

女子B:あー、桜君超可愛いーマジやべえー

女子A:いや、ちょ、B子!

女子B:何よ、英子。

女子A:惜しいけど何か違う!




そこで廊下から何人かの男子生徒の声がする。
桜が感づいたように、自分の荷物をもって
席から立ち去った。

廊下にできている人ごみを分けてはいると、体格のいい、男子が、有希の足元で倒れていた。




有希:てめえがんな奴だと思わなかった。




何も言わない男子。
見かねて桜が有希に声をかけた。



桜:・・・ゆーきー

有希:・・あぁ、お前か・・




怒りに満ちていた表情を
呆れへと変える。
男子生徒はその隙に走り逃げ、
有希は怒ったように桜に言った。




有希:てめえなあ!

桜:いやあ、有希見つけたから呼んだだけだよ

有希:・・わざとだろ、てめえ。

桜:好きに考えればいいさ。




飄々とした調子で前を歩いていく桜。
有希は入学式のことを思い出していた。




兄A:いや、それにしてもなあ

兄B:お前が本当に良く入れたよなあ

兄C:こんな名門高校。

有希:うっせ。

兄D:まあ、推薦入学だしねえ。

有希:・・・つか、四人とも来るとか・・

兄A:家族愛だな。

兄B:まさしく。

有希:黙れ腐れ脳ミソ野郎。

桜:あの。

五人の前ににこやかな笑みを浮かべた少年が現れる。

桜:一年生の方ですよね。教室に案内しましょうか?

兄C:お、良かったじゃねえか、有希

兄D:名門校のイケメンだぞ?

有希:騒ぐんじゃねえよ。みっともねえな・・てめえが案内されてろよ。

桜:それでは父兄の方々は、体育館の方へどうぞ。

兄A:父兄だってな!

兄B:全員”兄”だけどな!





何がおかしいのかさっぱり理解できない有希。
笑う4人についていけず、有希は桜と教室へ向かった。



有希:誰だか知らねえけど、上級生ぶるの、やめろよ。

桜:あはは。バレてた?

有希:他の学年の胸ポケットには花のコサージュがしてある。

桜:まあ、それもそうだね。僕は桜。

有希:あっそ。

桜:よろしくね、ゆーきさん。

有希:!?

桜:だって、お兄さんがそう呼んでたじゃない。

有希:・・・・変な奴。





回想終了。
疲れた顔をする有希。




桜:あれ?どうかした?

有希:・・てめえのせいだ。ばーか。

桜:そういえば今日、どうしたんだい?

有希:どうしたって・・なにがだ。

桜:さっきの逃げた男子。

有希:ああ・・んでもねえよ。

桜:ふーん、あんまり危ない事はしないように

有希:危ない奴がどの口でほざいてんだよ

桜:いやあ、有希には負けるよ(黒笑

有希:俺を怒らせる手段には長けてるようだなあ・・






そこで、後ろから、有希と背丈が同じくらいの
男子生徒、横田が走ってくる。
が、かなり息を切らしていて、
正直気持ちが悪いくらいだ。




横田:はっ・・はあ・・有希さんっ・・

有希:・・あぁ、横田。どした?

横田:あのっこっ・・どっ・・ハアッ・・ありッ・・

桜:ふうん。”さっきはどうもありがとうございました”か。

有希:(全力で引いて)まじ、きめぇな、お前。

桜:才能、といって欲しいね。

横田:あ・・お・・おれ、い・・

桜:・・・・・”あいつとおれはE”

有希:おい、才能どこ行った。才能。
・・・もう、行くぞ。

桜:(残念がって)えー・・・
(切り替えて)じゃっ、横田くん。ばいばい!

横田:ええっ!ちょっ・・ええー・・・?




あっさりと横田をおいていく有希と桜。
困った顔をしながら横田は二人の背中を見ていた。






次の日


兄A:有希!朝飯だぞー




少し間延び声が階下から聞こえる。
有希は制服のスカーフを整えて、返事をした。
それはそれは、男らしく。




有希:おう

桜:いやあ、以外にも寝坊助だねえ。ゆーきは。

有希:!!!!!!





有希、ドアを開けたその先にいた桜に驚く、
が、何事も無いように桜が階段を
降りていくのでまあ、こういう事もあるか・・と、受け止めていた。
これが日常茶飯事になっていくんだから、怖いもんだ。





兄B:おー、桜君、待ち伏せは成功したかい?

桜:いやあ、声もなく驚かれて
結構ショックです。ははははは。

有希:いや、何でうちのこいつをいれてんだよ。

兄C:そりゃあなあ?

兄D:そりゃあねえ?

有希:似たような顔同士で気持ち悪ぃな。

桜:それ、ゆーきも含まれてるからね。

有希:ああ?


食卓で用意されてる朝食を食べる六人。
そこで桜が思い出すように話す。



桜:ねえ、有希。昨日の横田君と、
あの男子の事なんだけど。

有希:なんだよ、またそれか・・

桜:横田君、いじめられてるの?



有希は少しだけ顔をゆがめてから、
いかにも自分は無関係だ、とでもいいたげな顔をした。



有希:しらねー

桜:・・柔道部員、西島浩輔。
一年生だけど、柔道部部長候補って期待されてる。 脳内筋肉莫迦。

有希:・・大体あってる・・が、それがどうした。

桜:ふむ。・・やっぱり君は彼を知っているんだね。

有希:う・・

桜:君と同じ中学校だったらしいしね。そうだろ?

有希:・・・・


ひょい、と西島の名前に反応した
兄が出てくる。



兄A:ああ、そうだよー

有希:っ・・兄さん!

桜:なるほど、なるほど。
しかし、見るからに馬鹿の顔しておいて、
あんなプロフィールおかしいと思って、
調べておいてよかった。




桜はポケットから紙を取り出した。
そこには怒りマークの顔文字と共にこんなことが書かれていた。


兄B:・・”西島っていう筋肉莫迦には不良の友達がいて、そいつらで部長を脅している”

兄C:”西島は不良とカツアゲしてる”

兄D:”A組のB個はぶりっ子、マジワロス”

有希:おい、最後。


桜:それ、学校裏サイトからとってきたんだ。結構最近の。

有希:あいつ・・まだ、んな事してんのかよ・・


有希は拳をにぎりしめ、通学かばんを取った。
桜も、同様に立ち上がり、かばんを取った。

兄’s二人が行ったのを見計らって会議。


兄A:けどなあ。西島君ってあれだろ?

兄B:ああ。有希が、なあ。

兄C:これは、あれだな。兄塚に頼んで

兄D:・・・行っちゃう?

兄全員:いっちゃうか!





【第一話 終了】
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