□相棒&快新
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余り車に乗るのは好きではない杉下は、月の輝く月光のもと、目的の家を目指しながら夜の散歩を楽しんでいた。
どれだけ時が過ぎても、月と言うのは変わる事がないものだなと思い、そして二人の人物を思い出す。


出会ったのは英国。


イギリスに少々滞在していた時に、その二人と出会った。
自分は他人から言わせればかなり変わった人間で、親しい友人と言う者を持たなかった。
それで良いと思っていたし、不自由もしていなかった。


だが、その二人は杉下にとって生涯の親友となったのだ。
残念ながら、その一人はもう…故人になってしまったけれど…
瞼を閉じれば、二人の姿が鮮明に浮かび上がる。


一人は今も変わらない。
人の悪そうな笑みを浮かべ、何も言わずとも全てを見通しているかの様に先読みをしていた。
日本でシャーロックホームズ等と杉下は呼ばれているが、その人物の方が余程その呼び名は合っていると杉下は思う。
だが……言ったらきっと、やはり喰えない笑みを浮かべ、


「いやいや杉下。私は探偵ではなく小説家。そして親馬鹿でもある。名探偵の名は我が息子に相応しいよ」


今にも声が聞こえてきそうな親友に、柄にもなく笑みが零れる。


そして…もう一人の今は亡き親友。
懐から写真を取り出して微笑む。
現在も存在する大怪盗。
だが、現在の怪盗は杉下の知る者ではない。


そう。もう一人の親友は「怪盗キッド」。
現在の怪盗はその息子だろう。
彼もまた「親馬鹿」だったなと思い出し、杉下は笑う。


「杉下。出来うる限り私は、私の代で怪盗を終えたいと思っている。
だが…もし息子に負担を掛けてしまったら…その…適度に工藤氏を止めてくれないか?」


「それは…どう言った意味でしょうか?」


と問えば、苦虫を噛みしめた顔をして、


「手加減という物を彼は知らないから。まだ杉下の方が優しさがあると思うから」


確かに…と直ぐに杉下も怪盗に同意してしまったのを良く覚えている。



本当は杉下は、当時怪盗を捕らえようと思っていたのだ。
だが……その前に「工藤優作」と出会ってしまった。
現場に向かう前に、紅茶を飲もうとしたのが、今にして思えば自分のミスだったと杉下は思う。



二人に出会った頃はまだ若かった自分。
現在の少々法に触れる捜査も、今にして思えば工藤の影響だと杉下は思う。



何せ初めて話し掛けてきた言葉が、


「興味深い事と言うのは、犯罪であれ、終わらせたくないものだと思わないか?」


口元に弧を描き、いきなりそう言ってきた男に杉下は目を丸くした。
一体何の事を言っているのかと問い返せば、


「君は英国の警察官ではないだろう?それでも怪盗を捕まえようとしている」


何でそんな事を知っているのかと問えば、まぁまぁ細かい事は気にするなと言われた。


全く細かくないと今でも杉下は思う。


そして更に男は続ける。


「私は実は怪盗とは旧知の仲なんだ。どうだい?今夜共に怪盗とお茶会を開かないか?」


出来れば警察には知らせないでくれると、尚良いのだが。
何て性質の悪い冗談を言う男なのだと杉下は思った。
だが、当時は本当に青く、怪盗を捕らえようとは思ってもどうしたら良いのか術に悩んでいた為、杉下は男の誘いに乗ってみる事にしたのだった。
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