□相棒&快新
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相棒&快(K)新






警視庁の端の端。
其処にあるのかも忘れられているのではないかと言う場所に、
警視庁に在籍する者にとって忘れる事が出来ない存在が本日も優雅に香り立つ紅茶を楽しんでいた。


警視庁特命係。
一応係長の警部。杉下右京である。
「係長」に一応が付くのは特命係と言う係には二名しか在籍していない為。
部下と言うより相棒だ。


その相棒は本日の業務を終えて、そそくさと彼女の待つ自宅へと帰って行った。
杉下の現在の相棒の彼女は、キャビンアテンダントをしている為に、自宅に帰って来れる休日は少ない。
今日はその貴重な日なのだと、朝から浮かれた様子で杉下に話聞かせるほどに、相棒は楽しみなようだった。
その事に今更ながら杉下は微笑む。
何て自分にとって動きやすい都合の良い状態だろうと。


以前組んでいた亀山薫は、現場重視の熱血刑事。人の気持ちを重んじて、警察組織と言う物に縛られず、ひたむきに事件の被害者を救済しようとしていた。



次に組む事となった神部尊は、亀山と違い、頭がかなり切れてキャリア気質。
上とのパイプもあって、いろいろと重宝もしていたが、何分頭が固すぎてこうと決めたら曲げない性格。
負けず嫌いな気質もあって、何かと杉下と衝突する事もあったが、強い信念があり、何よりも正義を重んじていた。



神部は杉下にとっては事件解決の為には仕方ないという、少々法に触れる行動にかなり敏感に反論してくる。
……亀山はそんな事なかったのに。
余り顔に出さない杉下もついつい険しい表情になってしまったのも、今では良い思い出だ。



そして現在の杉下の相棒は、
前の2人とまた違う性質の青年。
名は、甲斐亨。
通称、カイト。
父に警察庁次長を持つ、神部以上のエリート…と言いたいところなのだが、父親との確執があり、さっさと警察官を辞めろと毎日言われている。




警察官に成り立ての少年で、杉下が初めて、≪育成≫をし、≪成長≫を見守りたいと思った青年だ。
が、今日は、杉下は単独行動をしたいと思っていた。
現状。非常に動きやすいのだった………

















特命係の部屋から移動して、杉下は警視庁の鑑識室に来た。
とても良く杉下が個人的に世話になっている場所だ。


「今晩は。米澤さん」


「これはこれはっっ!杉下警部、お疲れ様ですっ」


杉下の訪問に何処か嬉しそうに答えるのは鑑識の米澤。
嬉しがるのも無理はないかもしれない。
米澤はとても杉下を尊敬していて、慕っていた。
余り表だっては言えないが警視庁内で杉下を尊敬している者は多いのだった。


「今日、江古田町で死体が出たとか」


「ははは。相変わらず情報がお早いですな」


杉下は今日もまた此処に気になった事件の情報を聞きに来たのだ。
ある意味日課。
特に捜査する事件が決まっていない特命係は杉下の興味によって扱う事件が決まると言って良いだろう。


「え〜と。こちらにある物がその事件の証拠物品なのですが……あの、恐らくただの飛び降り自殺だと思いますよ?」


米澤はすぐに杉下の必要とする証拠物品を準備しながら、念の為自身の意見も述べる。


「ええ、そう聞きました。ですが写真の中に一枚。なかなかに興味深い人物が写り込んでいたとか」


「ああ。捜査二課から聞きましたか?中森警部が騒いでいましたもんね。コチラです」


米澤から渡された写真を見て、杉下は口元に弧を描く。
やはり…とても杉下にとって興味深い事件の様である。


「この写真、お借りしても宜しいですか?」


「ええっ勿論!」


杉下の問いに嬉しそうに米澤は答え、一つ頷いて杉下は鑑識室を後にしたのだった。




特命係の部屋に戻り、杉下は先ほど借りてきた写真を見つめる。
被害者が飛び降りる直前のマンションの監視カメラの映像から抽出した物だ。
その写真には被害者が飛び降りたマンションの屋上が写っていた。


写真の右端の時刻は被害者が飛び降りる数秒前を示していた。
その空には白い大きな鳥の姿。
杉下はその鳥を見て口元にまたも弧を描いた。


そして…机に置いておいた何部かの新聞に目を遣る。


幾つかは写真に写り込んでいた白き鳥…
世間一般では「怪盗キッド」と言う呼び名の鳥の事件を扱った記事。


そして…他の新聞には「高校生探偵!またも事件解決!!」と言う記事。
怪盗に負けない大きさで掲載されている写真には、杉下に更に笑みを浮かべさせる人物が写っている。
その写真の隣に証拠品である写真を重ね、杉下は笑う。


「やはり………とても興味深い事件になりそうですね」


相棒に見つかる前に動きだそうと、杉下はコートを羽織り早速目的地へ足を運ぶ事にしたのだった………
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