プレリュード・裏舞台

□短編集 13.9.30up
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「なんだ?コレ……」
アティの執務室で、 エバンは顔を引きつらせていた。
目の前の机に乗っているのは、所謂男のアレの変わりになる道具たちだった。
そのうちの一つは、大粒のパールで直列に繋がっている。
「それ、俺が若い頃に倉庫を片付けていたら出てきたんだ」
にこやかに言うアティに、何で親衛隊だったお前が、倉庫整理してんだというツッコミがあるが、何で俺に見せてきたというツッコミもしたい。
「昔、国の統一に追われて、夜の相手をするのがなかなか難しい王族の為に作られたんだろ。良い素材だ」
「……で?」
「やる」
「やる…じゃねぇよ!何でご丁寧に取って置いてんだ!?」
「いやぁ〜、クランに使えるか〜なって思って。全力で拒否されたけど」
「ハークだって拒否るわっ!」
「でも、ハークはあまり性に関する事は知らないんだろ〜?使うのが当たり前な感じで行けばいいじゃねぇか。特にこのパールのヤツはキラキラしてるから、喜ぶんじゃね?」
「………」
用途が判れば、それが例えパールであっても喜ばないだろう。ハークが好きなのはキラキラした物であって、宝石自体が好きなわけではない。
「ん〜…じゃ〜、やっぱ捨てるかぁ。お前達がくっ付いたと知って、そういえばと引っ張り出してきたんだが…」
「………」
アティが残念そうに言うと、エバンはなんだか勿体無いような気がしてきてしまう。
「いや…やっぱそのパールのヤツは…」
「おっ、お買い上げありがとうございます」
冗談混じりに、アティが素早くさっと手渡してくる。
(嫌がんかな〜……?)
しかし、ソレは使う機会がなく、タンスに仕舞われたまま数日が経ったある日…。
「エバーン!」
勤務から戻れば、ハークが焦りながら両手に何かを握りしめて持ってきた。
「なんだ…?」
エバンはハークの握ってるものを確認すると、げっと肩を揺らした。
それはあのパールだった。しかも、両手に持っているということは、どうやら壊したらしい。
「すまない!エバンの服を整理してたら出てきて…ネックレスかと思って曲げたら、バキッて…」
「へ?」
ハークの説明に、思わずエバンは惚ける。
どうやら、こんなモノを隠しといてと怒って割ったわけではないらしい。
「すまない……」
「いや…その……」
本当の事を考えると、しょんぼりとしてるハークに申し訳ない。
「いいんだ…お袋に買った簪なんだが、渡すの忘れてただけだから…」
「…これ、パールだろ?似たようなの売ってるかな?」
「だから、いいって!間違っても探しに行くなよ!?」
「…エバン、怒ってる……」
「怒ってねぇよ!」
「やっぱり怒ってる……」
「怒ってねぇって!」
堂々巡りな言い争いをしだした二人に、アレイが目を細めて溜息をつく。
「…またやってますね……」
「あはは。さっさと使っちゃえばいいのにさ!」
「使う?」
ハークの持ってるモノが何か気付いたローダは思わず吹いてしまうが、アレイは首を傾げた。
そして、エバンはというと、後にハークとセリーズの簪を一緒に選びに行く事になる。


〜おまけ〜

「アンタが私に贈り物なんて珍しいね。しかも、なんでパール?わたしゃ原色系の方が好きなんだけどね」
「うっせー、聞くな」

〜大人なアレ〜 了
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