「なななな…なんなんだこれは?!」
夏の昼下がり。
さっき母さんから電話がきて、夕立が来そうだからと、洗濯物を取り込む様にと頼まれた。
肌に張り付くような蒸し暑さの割に、ジリジリと照りつける日差し。
空を仰ぐと、遠くに黒く淀んだ雲を確認出来る。
そろそろ降りそうだな。
オレは急いで洗濯物を部屋の中へと運んだ。
ゴロゴロゴロ…ザァァァァ…―
外から、雷鳴と同時に、バケツをひっくり返した様な雨音が聞こえてくる。
本当に間一髪だったようだ。
オレはほっと胸を撫で下ろした。
「さてと…」
使命は果たしたし、昨日買ったゲームでもしようと、居間へと歩を進めた。
すると、足元にあるものに目を奪われ、息を飲んだ。
「こ…これは!?」
それを手に取ると、オレはまじまじと見つめる。
薄いピンク色の生地に、レースがあしらわれ、所々に色とりどりの小さな花を咲かせている、この小さい布切れ。
世にゆうブラジャーってやつだ。
「え?母さんのか?」
嫌、違う。
何が違うって、ぶっちゃけサイズが違う。
このサイズには見覚えがある。
そう、オレの双子の片割れ。リンのものだ。
確かついこの間まで、スポーツブラの様な、何の色気もないものを着ていた筈…。
いつの間に、こんなもの買ったっていうんだ?
あれか。あれなのか?!
もしかして好きな奴でも出来たのか?!
だって、胸が大きくなった訳でもないのに、いきなりおかしいだろ。
まぁオレ達も、もう中学二年だし?
好きな奴がいても、付き合ってる奴がいても当たり前だけど。
だけど、リンがこんなものを身に付けて、他の奴に見せるなんてオレには耐えられない。
オレの心臓の鼓動は速度を上げ、嫌な汗が額を伝う。
……誰だ?リンが下着姿を見せようってのは。
おいおい。もしかしてミクオか?
そういや昨日、なんか楽しげに話してたな。
はたまたリントか?
アイツ、ほんのちょっとオレより背が高いからって調子に乗りやがって。
オレは悶々と一人葛藤を続けていた。
「ただいまー!!」
すると雨音しかしない部屋に、突如声が響く。
振り向くと、笑顔で駆け寄るリン。
オレはというと、手にブラジャーを持ったままという、なんとも変態丸出しの姿。
「あっ!!それ可愛いでしょー?」
そんなオレに、リンはあっけらかんと、いつもの笑顔で声を掛ける。
あれ?なんか普通じゃね?
すると、リンはオレの手からブラジャーを取り上げて、自分にあてがいながら続ける。
「あのね、クラスの子達はもうみんなブラしててね。
リンもした方がいいって、昨日ママが買って来てくれたんだ!!」
え?もしかしてそれだけ?
オレが呆気にとられていると、リンは似合うー?と言いながら、屈託ない笑顔を向ける。
そして、おやつを食べようとオレの手を取った。
なんだよ、まったく。
まだまだ色気より、食い気ってやつか。
はは…心配して損した。
オレはほっと胸を撫で下ろした。
…でも、もしもこの先リンに本当に好きな奴が出来たら、オレはどうなってしまうんだろう。
そんなことを考えながら、リンの手から伝わる温もりを感じていたのだった。
end.
―――――――――――
ご訪問いただき、そして拍手までしていただきありがどうございます(⊃ ω ⊂)
久しぶりの拍手の更新だというのに、なんともくだらないネタですみませんww
リンちゃんのブラジャーのことを考え出すと、悶々とする椿です←
ではではっ、拍手ありがとうございました(*´д`*)
2011.7.25
椿(つばきんぐ)