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□プラチナ
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(虎&兎というアニメでございます)(虎さんは男やもめ(暫定)ですのでご注意!)












番組一番のニュースを飾るは今日も今日とてお手柄ヒーローの一件、画面には助け出されたお年寄りと崩壊したビルが混ざり合う不思議なコントラストが延々と流れていた。



「で、今回もスカイハイにポイントを持っていかれちゃったと?」

「あーのな、ニュース見たろ?あんだけの高層ビルだったんだぜ」

「相方のバーナビーさんは、しっかり救助ポイント稼いでましたけどね」

「アイツの話はやめてくれ」



その話はもうウンザリだ、大袈裟に手を広げて、目の前のワイルドタイガ…、いや今は虎徹と呼ぼう、彼はソファにどさりと身を預ける。

スポンサーからも大目玉くらっちまって、こんな時間になってんだぜ?
帽子を脱ぎながらため息をつく彼へ入れるコーヒーは少し苦くしてあるけど、きっと彼はそんな事には気付かないのだと分かっていた。

時間は日付の変わるほんの少し手前、一日中このニュースに充てられていたであろう彼を追い込む事が出来ないのは、惚れた弱みと言われればそれまでだと思った。



「鉄柱を折る必要はあった?」

「それは上司に言われた」

「先にあの子供だけ助けてればポイントだってあったのに」

「それはお前のだーい好きなウサギさんと同じセリフだな」

「ワイルドタイガー、トッテモカッコ良カッタデスヨー」

「今日は一段と棒読みデスネー」



困ったように笑ったかと思うと、虎徹はおもむろにテレビのスイッチを落とす。

急に静まり返ったリビングに、自分の家だと言うのに酷く居心地が悪くなった。



「だいたいそんな残業喰らって、なんでウチに来るのよ」

「可愛くねぇなぁ…会いたかったからって、こんなオッサンに言わせて楽しいかよ」



ソファの横に立っていた私の腕をいきなり掴んで彼の腕の中へ引っ張られる。

さっきまでのうんざりしたような声色は一変。

いつもの軟い彼の口調は私の神経を少しずつ麻痺させていくようだった。

普段は一般人だなんて謳ってるけどそこはヒーロー、一度ホールドされてしまえば私は彼の腕の中で、この小さな小さな世界から逃げることすら出来なくなってしまうのだ。



「……ねぇワイルドタイガー」

「そこは虎徹だろ」

「無事でよかった」

「……おー」



見えないぐらいに胸元へ顔を押しつけてようやく一言が出せた私を、虎徹は髪をぐしゃぐしゃにしながら受け止める。

そのまま腕をごそごそと伸ばしたかと思うと器用に照明のリモコンを掴んで明度を落とされてしまった。

薄明かりの部屋にマンハッタンの煌めきが跳ねる。この時の彼の深呼吸が、私は世界で一番憎らしいと思った。



「……な、だから懲りただろ?」

「まだ、だもん」

「しぶとい女だよ、お前は」



恋人がヒーローなんて、辛くて怖くて不安になるだろ?

この応酬を、もう何回繰り返しただろう。数えることすら諦めた私は何も言わず、ただ彼の胸元で首を振るだけだった。



「だぁから、こんなオッサンの事はさっさと忘れて──…」

「虎徹、



ようやく呼んだ名前に彼がぐっと息を呑むのが分かった。

律儀に着込んだシャツを掴んでベストのボタンを引っ張り上げれば彼はもう何も言わず、また困ったように笑ってくれる事を私は学習している。




──…いいから、しよう」




装甲スーツも擦れたシャツもカウチの床に放ってしまえば、彼はもうヒーローでも何でもない。

お互いそんな姿になってまで相変わらず律儀で潔い虎徹の愛撫に翻弄されまいと髪に差し込んだ指は、すでに力が抜けて震えているのが分かった。



「ね…、私、ね、文句ない、からさ…っ、」

「まぁだ言ってんのか、今日は余裕だな」

「『それ』…、今日は、もぅ、外して…っ!」

「……言わなきゃ、俺も忘れてたのに」



お前も大概バカだよなぁ。

耳に一つキスを落として、虎徹は熱い身体を私から離した。



ヒーローの恋人なんて断りの常套句に過ぎない。彼はこうして私のこの、どうしようもない熱を、ただただ受け入れて甘やかして、そうして流してしまうだけの、



「(おっさんだとか自分で言って、ホントにタチが悪い)」



本気になれない理由はそんな事ではない筈なんでしょ?
職業がヒーローだろうと、私とは少しばかり年が離れていようと、そんなこと本当は、この狡い大人の前では瑣末な問題Aでしかないクセに。


彼の右手が左手に届いた。
さっきまで私の身体を優しく抱きしめて支えてくれていた熱い手だったけれど、見ていられなくていつものように目を閉じる。
流れた涙は生理的なものではなかったけど。



「(スポンサーでも、上司でも、バーナビーのものでも無いのに)(この人は、)」



彼の左の指が伸びて、薬指からプラチナが抜き取られて、それは彼のコーヒーの横へと静かに寝かされるのだ。

私とこんな関係になってから何度も繰り返してきたせいで、その動きはほんの数秒の隙間だった。



「最近じゃ外すの忘れそうで、俺も怖ぇんだよ」

「じゃぁどうして……っ、」



私のものになってくれないの。叫びたかった言葉は深い深い大人のキスで殺される。

ずるい、そうやって困ったように笑って、泣きそうな顔をして、



「……ごめんな」



それは誰に対して?

それでも愛しい目の前の身体に必死で腕を伸ばしていたら、今日もまた私は、この狡い男を愛し続けてしまう。











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タイバニにハマりすぎて辛いのに夢サイトが無くてもっと辛いって言ってたら優しいお姉さん方が『てめぇで書け^^』って言ってくれました ありがとうそしてありがとう!
私の中の虎はこんな感じでただのイケオジでございますモダモダさせろとか言われてたのにごめんなさい皆さんの乾きが少しでも潤えば幸いですし誰か様がタイバニ夢を書いてくださったらもっと幸いです(真顔)

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